"田舎姑の一億円裁き" 第1話
京の等に位置する超流ホテル、グランドパレス京。
その最階にあるボールルームには、のにいるかのような絶景が広がっていた。窓面に広がる京の夜景は、宝箱をひっくり返したようにきらめき、今という特別なを祝福しているように見えた。
佐藤かよ子、62歳。
彼女はその豪華な空の片隅で、しだけ違いな覚を覚えながら、1息子である健太のれ姿を見つめていた。
京都の郊で、き夫が残したさな京友禅のをこつこつ守りながら、女1つで育てげた息子だった。京の学へ学させ、ITベンチャーを起業するというを、かよ子はから支え続けてきた。
その健太が、今、最良のを迎えている。
それだけで胸がいっぱいになるはずだった。
かよ子がこののために箪笥の奥からしたのは、き夫が切にしていた淡い藤の訪問着だった。熟練の職が針針、丹精込めて仕てた着物は、決して派ではない。けれど、凛とした気品を漂わせていた。
しかし、きらびやかなブランドドレスにを包んだ列席者たちので、その伝統な装いは、どこか古で控えめに見えたのかもしれない。
婦、レナは、まさに現代の成功した女性そのものだった。
資系コンサルティングファームに勤務し、パリの最コレクションで発表されたばかりというマーメイドラインのウェディングドレスを見事に着こなしている。
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で洗練され、自分の価値を疑うことをらないい自信に満ちていた。
健太が彼女に惹かれるのも無理はない。
かよ子はそうった。
息子が選んだなのだ。自分がをすことではない。
披宴は滞りなくんだ。やがて、かよ子が親族代表として挨拶につになった。
司会者に名を呼ばれると、かよ子はゆっくりとちがった。元の履をえ、背筋を伸ばし、会のへむ。
マイクのにつと、数百の招待客の線が斉に向けられた。
彼女は緊張を胸の奥に押し込み、用してきた言葉を1つずつ丁寧に紡いだ。
「健太は々そそっかしいところもございますが、1度決めたことは最までやり通す芯のい子でございます」
かよ子は、息子の方を見た。
健太は照れくさそうに笑っていた。
「レナさん、どうかそんな健太を末永く支えてやってくださいませ」
くをげると、会から温かい拍が送られた。
かよ子は席へ戻りながら、胸の奥でさく堵の息をついた。
やっと役目を終えた。
そうった。
だが、獄はその直に訪れた。
席に戻ったかよ子が、健太とレナに「おめでとう」と声をかけた、その瞬だった。
レナは、隣に座る健太だけに聞こえるとったのだろう。
に持っていたマイクのスイッチがまだ入っていることに気づかないまま、たく刃物のような声で囁いた。
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「ねえ、健太さん。お義母さん、スピーチは良かったけど、やっぱりなんていうか、田舎くさくてちょっと恥ずかしいわね」
かよ子のが止まった。
レナはさらに続けた。
「悪いけど、これからはあまりにないように言ってもらえる?」
その声は、静まり返った会の隅々にまで、マイクを通して鮮に響き渡った。
瞬、が止まったようだった。
先ほどまでの温かい拍が嘘のように、会は凍りついた。数百の招待客の線が、斉にかよ子へ突き刺さる。
同。
好奇。
そして、かすかな嘲笑。
その線の槍に、かよ子の全は射抜かれたようだった。
臓が氷の塊に押し潰されたように痛む。血の気が引き、指先が急速にえていく。
田舎くさい。
恥ずかしい。
その言葉がので何度も反響した。
息子のために、祝福の気持ちだけを胸に京都からてきた自分に対して、これが仕打ちなのか。
隣で、健太が真っ青な顔をしてうろたえているのが見えた。
しかし彼は何も言わなかった。
する妻をたしなめることも、侮辱された母親をかばうこともしなかった。ただ、おろおろと線を泳がせるだけだった。
そのさが、レナの言葉以にかよ子のをくえぐった。
会のざわめきがくに聞こえた。