"クリニックの天才少女" 第12話
メイの目にみるみる涙が溜まった。唇を震わせて何度もさく頷いた。
はい、こちらこそよろしくお願いします。
その声はさかったけれど、確かに笑っていた。
初めて見た気がした。メイがこの診療所でから笑うのを。
その、ちょっと柔らかい声がした。カウンターの奥で話を聞いていたせ子がゆっくりとこちらに歩いてきた。
メイのでち止まり、しばらくメイをじっと見つめていた。やがてせ子がぽつりとをく。
あんたにずっとたくして悪かったね。
メイが驚いた顔をした。せ子の声がいつもと全然違っていた。刺々しくもない、突き放すでもない、震えていた。
初めて言うけどね。私もあんたと同じなのよ。
同が息をんだ。私も卒なの。
空気が変わった。翔太も私もメイも黙ってせ子を見つめていた。せ子は俯きながらぽつりぽつりと話し始めた。
うちも貧乏でね、学をてすぐ働いたの。で、堂で、事務で。何をしたって学歴のことを言われた。せ子のが震えていた。
卒じゃちょっとねって面接の度に言われて、まともに相にされなくて悔しかった。悔しくて悔しくて歯をい縛って何も必で働いてきた。
せ子の目から涙がこぼれ落ちた。65 歳の女性がで泣くのを、私は 30 で度も見たことがなかった。
広告
だからね、あんたが来た腹がったの。
メイを見つめるせ子の目にようやく本音が滲んでいた。私はあんなに苦労したのに、何もかけてやっとここまで来たのに、ひょっこり現れた若い子がすぐに認められるのかって。見苦しい、見苦しいって分かってた。自分が違ってるって分かってたの。でも止められなかった。
せ子は袖で目を拭った。でも涙は止まらなかった。
あんたのレポート、さっき盗み見したわ。はほとんど分からなかった。でもね、分かったことがある。あんたは私と同じ痛みを抱えて、私と同じように歯をい縛って、でも私よりずっとずっとかった。せ子の声が震えた。
私は学歴を言い訳にして、どこかで諦めてたのかもしれない。卒だから仕方ないって。自分で自分に蓋をしてた。でもあんたは諦めなかった。卒でも誰にも認めてもらえなくても、自分の力を磨き続けた。あんたは私がなりたかった自分よ。
メイの目から涙が溢れた。せ子さん、ごめんね。悪してたくして本当にごめんなさい。
せ子はくをげた。65 歳の女性が 25 歳の女の子に、いいのげ方だった。30 分のと何分の痛みが全部そこに込められていた。
メイは首を横に振った。涙を流しながら首を横に振り続けた。謝らないでください。
広告
せ子さんが何もこの診療所を支えてきたから、今ここがあるんです。メイの声も震えていた。受付も会計も類も全部でやってきたんですよね。30 院先の隣でずっと。私にはできないことです。だからせ子さんを尊敬しています。本当に。
せ子の顔がくしゃっと歪んだ。声をげて泣いた。慮も何もなく声をげて。私は 30 このが泣くのを見たことがなかった。いつもくて刺々しく、音なんか吐かないだった。でも本当はずっと痛かったのだ。卒のレッテルを背負って歯をい縛って、泣きたいもしてこの所を守るために。
待に穏やかな朝が差し込んでいた。68 歳の院、35 歳の医師、65 歳の事務、25 歳の清掃員。が初めて本当のでつになった瞬だった。
翌週、私はき始めた。メイのレポートを持って、まず県の医療政の担当部署に連絡を取った。次に昔の学教授に話をかけた。30 に学病院にいた頃の同期で、今は国内トップクラスの医学部で予防医学を研究している男、吉だ。
久しぶりだな。奥で元気にやってるか?
元気とは言えないが、見て欲しいものがある。レポートをメールで送った。
翌、折り返しの話が来た。相の声のトーンが昨とまるで違っていた。
吉、これは君がいたのか?
いや、うちの従業員がいた。
従業員?医学部か?
卒の 25 歳だ。
話の向こうでい沈黙があった。冗談だろう。
本気だ。