"クリニックの天才少女" 第5話
メイの声が詰まった。
「気づいていたのに私には何もできなかった。おもなくて、識もなくて、病院に連れていく力もなくて、母は私の目のでいなくなりました。」
メイの目から涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「あの、私に力があれば、私がもっと何かできるだったら母を助けられたかもしれない。ずっとずっとそうってきてきました。」
胸が締めつけられた。この子はそういう過を背負っていたのか。
まれ持った観察力。それは誰にも認められないままずっと彼女のに眠っていた。
母を救えなかった悔だけを燃料にしてこの子はり続けてきたのだ。
だから誰かの異変に気づいた、今度こそ何かしたかったんです。同じ悔をもう 2 度としたくなくて。
私はメイをじっと見つめた。そして 1 冊のノートを渡した。
「頼みがある。通院する患者さんの様子を君の目で毎記録してほしい。」
メイが驚いた顔をした。
「歩き方、表、仕、声の調子。君が気づいたこと何でもいい。全部いてくれないか?」
「私なんかがいいんですか?」
「君なんかじゃない。」
私はメイの目をまっすぐに見て言った。
「君だから頼むんだ。君の目はどんな検査器にもない力を持っている。」
メイの目からまた涙が溢れた。今度はこらえきれなかったのだろう。ポロポロと次から次へと流れ落ちた。
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メイは震えるでノートを受け取ると胸に抱きしめてくくお辞儀をした。そのまましばらく顔をげなかった。さな肩が震えていた。
きっとこの子は今まで 1 度も「君だから」なんて言葉を言われたことがなかったのだろう。
でもみんながそうったわけではなかった。
翌、翔太が私のところにやってきた。
「親父、どうかしてるぞ。あの子に患者の観察記録をつけさせてるって。ああ、冗談じゃない。たまたま 1 回当たっただけだろう。清掃員の勘に頼る医療なんてありえないだろう。俺たちは科学をやってるんだ。」
息子の言い分も分からなくはない。データに基づかない判断は危険だ。それは医療の原則だ。
「たまたまかどうかはこれから分かる。」
私はそう答えた。翔太は納得していない顔でていった。
せ子はカウンターの奥からノートを抱えて嬉しそうに掃除をするメイをじっと見ていた。その目が瞬だけ揺れたように見えた。でもすぐにいつもの無表に戻って類に目を落とした。
メイは気づいていなかっただろう。このさな診療所にもうすぐきな嵐がやってくることを。
メイが観察ノートをつけ始めて数が経った頃のことだ。
そのは朝から空気がかった。の気は変わりやすい。
さっきまでれていたのに、昼過ぎにはのがを覆い始めていた。
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午 2 、診療所のに見慣れないが止まった。
黒い級セダン。この奥ではらかに違いな、ピカピカに磨きげられただった。
からりてきたのは 50 代半ばくらいの男だった。きっちりと撫でつけた髪、仕てのいいスーツ、磨きげられた皮靴、たい目つき。
男は診療所の観を見回しながらさくで笑った。
「ここが藤原クリニックですか。なるほど。」
その調にはらかに見しのが混じっていた。
名刺を差しされた。
「セントラル医療本部の黒田だと申します。」
セントラル医療、名はっていた。
ここ数で急成しているの医療グループだ。
方の経営難な診療所やさな病院を次々と買収統して全国に展している。
域の救世主なんて持ちげられることもあるが、業界のでの評判は別だった。
傘に入った診療所はこごとく経営方針を変えさせられる。
「1 の患者にかけるをくしろ。回転率をげろ。利益をせ。」
聞くところによるとセントラル医療の病院では医師がパソコンの画面ばかり見て患者の顔すら見ない診察が当たりになっているという。
私が学病院で見て嫌気が指したあの景と同じだ。いや、もっとひどいかもしれない。
あれはなくとも医療の効率化が目だった。