"クリニックの天才少女" 第2話
彼女は恐る恐る封筒を差しした。
からてきたのは 1 枚の履歴。
名は幸メイ。25 歳。
学歴の欄にはたった 2 文字だけがかれていた。卒。
職歴の欄にはいくつかのアルバイトが並んでいたが、どれも期で終わっている。
私は履歴から目をげて彼女の目を見た。
彼女は俯いたまま唇をキュッと結んでいた。
膝のでねたが刻みに震えている。
「どこかで医療のお仕事の経験はありません。資格も何も持っていません。」
声が震えていた。
1 つ答えるたびに彼女の肩がさくなっていくのが分かった。
自分の言葉で自分を追い詰めているような、そんな痛々しさがあった。
でも顔をげた。その目に涙が滲んでいた。
「何でもします。掃除でも雑用でも何でもやります。お願いします。ここで働かせてください。」
その言葉は質問というよりも祈りのように聞こえた。
何度も何度も扉を閉められてそれでもまだ諦めきれないの最の叫びのような声だった。
その奥から翔太がやってきた。
メイの履歴をちらりと見て眉を潜めた。
「親父、ちょっといいか?」
翔太は私を廊に引っ張りした。
「何考えてるんだ?まさか雇うつもりじゃないだろうな。」
翔太の声は押し殺していたが、苛ちが滲んでいた。
「来には潰れるかもしれないんだぞ。
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を雇ってるじゃない。」
「分かってる。」
「分かってないだろう。それに卒で経験もなし。医療の現で何ができるんだ。」
息子の言うことは正論だった。
経営はの。来には潰れるかもしれない診療所にしくを雇う余裕なんてない。
まして卒で経歴もほとんどない 25 歳の女の子だ。
ちらりと受付の方を見るとせ子が彼女をじっと見ていた。
その表はどこか複雑だった。
何か言いたそうだけどみ込んだような、そんな顔だった。
私は黙って待に戻った。
メイはまだ同じ所に座っていた。
俯いたまま両をギュッと握りしめ、まるでここを追いされることを覚悟しているような佇まいだった。
私は彼女の目を見た。
何度も拒絶されてきた目。疲れきった目。でもまだ諦めていない目。
その奥にさな炎のようなものが揺れていた。切実で真っすぐなだった。
その瞬、30 の自分をいした。
学病院をやめると言った、周囲から向けられた目。
「あいつはおかしい、もったいない、バカなやつだ。」
あのの私もきっとこんな目をしていたんだろう。
認めてくれるは誰もいない。それでも信じているものがある。そういうの目だ。
気がつくとがいていた。
「うちは学歴じゃない、を切にえるかどうかだ。から来なさい。
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」
メイの目がきく見かれた。唇が震えた。涙がポロリとこぼれ落ちた。
「ありがとうございます。」
さなさな声だった。でもそれは確かにの底からの言葉だった。
メイは子からちがるとくくをげた。そのまましばらく顔をげなかった。肩がさく震えていた。
廊の向こうで翔太が腕を組んだまま黙っていた。納得していない顔だった。
「親父、悔するぞ。」
さな声でそう言って翔太は診察に戻っていった。
せ子はカウンターの奥で何も言わずに類に目を落としていた。その横顔には何とも言えない表が浮かんでいた。
こうして幸メイは藤原クリニックの清掃員になった。
誰も彼女に期待していなかった。誰も彼女に注目していなかった。
このの私はまだらなかった。
このさな会いが 1 ヶにどんな奇跡を起こすことになるのかを。
廃業まであと 29 だった。
翌朝、まだの空がかりになり始めたばかりの。
私が診療所の鍵をけようとすると玄関先にがあった。メイだった。
朝の 6 、勤は 8 のはずだ。
「おはようございます。くてすみません。しでもお役にちたくて。」
メイはくをげた。
昨と同じあせたカーディガンだったが、きちんと洗濯されていて、髪も丁寧に束ねられていた。
昨の怯えた表とは違う、どこか決のようなものが滲んでいた。
「そうか。じゃあ入りなさい。」
私は鍵をけてメイをに招き入れた。