"身代わり花嫁は荒くれ旦那に溺愛される" 第3話
彼は、武の娘が自分のに来たという事実が信じられないよう、ぽかんとっており、おふはそんな彼の態度から、噂ほど残忍なではないかもしれないという淡い希望を見いだしました。
「そこに突っってないで入れ。部は温めてある」
剣造はそう言って背を向け戸をけてくれました。調は乱暴でも、には奇妙な気遣いが滲んでいました。
おふは無言で剣造のについて部に入りました。内はいのほか温かく綺麗に片付いていて彼女を驚かせました。
おそらくしい妻を迎えるために、彼なりに具を片付け掃除をし、を焚いておいたのでしょう。
部の隅に座ったおふは相変わらず顔を隠した布をろさず、緊張した姿勢で座っていました。
剣造は内をったり来たりしてどうしていいか分からない様子でした。
荒仕事ばかりしてきてきた彼は、美しい女性、それも名のお嬢様をどう扱って良いか全く分からなかったのです。
剣造は何度か咳払いをすると、
「俺はでやることがあるから、事は台所に用してある」
という言葉を残し、逃げるようにへてってしまいました。
残されたおふはそのようやく覆い布をげ、部のをじっくり見回しました。壁はあちこち破れ、具は古びていましたが、どこかの温かみがじられる空でした。
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お様ではない自分がここにいることがバレるのを恐れていましたが、今は誰もいないことに堵し、息をつきました。
おふはちがり台所へ向かいました。そこには剣造が用した格好だが真のこもった事が置かれていました。
きな飯の塊と漬け物が数切れ、そして麦茶が杯あるだけでしたが、おふはその事を見てなぜか胸がくなりました。
たちが怪物だとろ指を刺す荒くれ者が用した最初の事にしては、あまりに素朴でらしさにあふれていたからです。
おふは空腹だったので飯をべながら、今このでき残るためには自分がこのの主婦とならねばならないと決しました。
まれつき働き者で器用な先で、この暗いをがらげる所に変えて見せようとに決めました。
からは剣造が薪を割る音が規則正しく聞こえてきました。この音はおふのなを叩くようでもあり、慰めてくれるようでもありました。
事を終えるとおふは台所を見回し、理するものを目で確認し、袖をまくりげて皿洗いから始めました。
カチャカチャと器の音が静かな奥のに響くと、で薪割りをしていた剣造のがふと止まるのがじられました。
夜がくなると、くでフクロウの泣き声がくに聞こえてきました。
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おふは部に戻り布団を敷いて横になりましたが、眠りは容易に訪れませんでした。
剣造は夜遅くまで部に入ってこず、をうろついているのか音だけが聞こえました。
おふは彼がもしや自分の正体を疑っているのではないかと配になり、を澄ましました。
しかし剣造はから言、「寒ければ薪をもっとくだせ」と投げかけると、向かいの部へって寝るようでした。
その器用な配慮におふはく笑みを浮かべ、たいが吹き込む戸の隙を見つめながら、松本の敷に残されたお様をいました。
今頃お様も自分のをじて泣いているのか、それともしはらいでいるのか分かりませんでした。だがおふは、お様のためにもこのから追いされず耐え抜かねばなりませんでした。
朝が来れば剣造と正式に向きわねばならず、そのから本当の戦いのような々が始まることを彼女は本能に予していました。
鶏が鳴く、おふはく起き、庭の竈にを入れて温かい朝を作り始めました。
荒くれ者の妻となりましたが、彼女は昔から働き慣れた女の習慣を捨てられず、むしろそれがこの見らぬ所で耐えられる唯の武器でした。
竈からつい煙が朝の空に昇る頃、向かいの部の戸がき、寝ぼけの剣造がてきました。