"災いの男、女だけの島" 第1話
と空が溶けうほどい昔の話でございます。
丘では像もつかないような議な物語が波に乗って語り継がれておりました。
その頃本では学問を嗜むの武士がおりました。
その名を吉助と申しました。
彼は実直な気性とい学識で褒め称えられ、この度方の島々を統辖する藩の代として島への巡を命じられたのでございます。
彼は旅籠のに何よりも切にしている物と、分を証する往来形、そして硯箱を忍ばせました。
見らぬで民をどのように納め慈しむべきかを砕きながら、御に乗り込んだのです。
は穏やかでも順調でございました。
は数の順に帆を膨らませへとみました。
のでは平線を眺めてはを詠み、自ら賛した本学の章を紐解いてはしい任での勤めにいを巡らせておりました。
彼はのあまりの広さにふと畏怖のを抱きましたが、すぐに武士としての気概を取り戻し、気を振いたせました。
に乗りわせた漁師たちや商たちも皆、しいへの期待に胸を膨らませていたのです。
吉助は酔いをこらえながら夜空のを仰ぎ、戸の空とは違うの座を目に焼きつけておりました。
しかし目の島がづく頃、空が急に暗くなり始めました。
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それまで優しく吹いていたが瞬くに鋭い鳴のような音をて、荒れ狂う暴へと変わったのです。
空は炭を流したような黒に覆われ、漆黒のが世界をみ込みました。
たちが帆をろそうと必になりましたが、はすでに彼らのに負えるものではありませんでした。
は巨な波のでの葉のように頼りなく揺れきました。
吉助は物を伴としてきてきた男であり、このような自然の激しいりのでは無力なに過ぎませんでした。
波はのように盛りがりを叩きつけました。
メリメリという気な音と共にの帆柱が折れ、々の鳴が荒波の音にかき消されました。
吉助は必に材にしがみつきましたが、巨なの塊が彼を襲いました。
はもはやこなごなに砕け散っておりました。
あちこちから助けを呼ぶ声が聞こえましたが、それもすぐに瞬くに消えていきました。
彼はたいので必にもがきながら、運よく流れてきた板の破片にしがみつきました。
識は次第にくなっていきました。
どれほどのが流れたのかるよしもありません。
昼なのか夜なのかさえわからぬ混沌ので、吉助はただきたいという本能だけで識を保っていました。
淡と塩が混ざりってに入り、体は寒さで凍りつくようでした。
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彼は故郷の未練をい、まだ果たせていない志しをいました。
このままの藻屑となるのか。
彼の目が力なく閉じられようとしたその、巨な波が彼を再びみ込みました。
ふと気がつくと、吉助は柔らかな砂のにうつ伏せになっておりました。
目をけると眩しいほどの差しがり注いでました。
彼は自分がきていることに驚き、激しく咳き込みました。
喉のは塩辛かったものの息をすることができました。
彼が倒れていた所は見たこともない真っな砂浜でした。
は先ほど荒れたのが嘘のように穏やかに、空は点の曇りもなくれ渡っておりました。
嵐の爪跡はどこにもありません。
気力を振り絞り体を起こしました。
体が痛みましたが、幸い骨は折れていないようでした。
しかし腰に差していたはずの切な刀がありません。
武士の魂を失ったことに彼は愕然としましたが、今はき延びることが先決でした。
着ていた羽織りは破れてボロボロになり、髷は溶けてみっともない姿となり、見るも無惨な姿でした。
彼は辺りを見回しました。
彼が流れついた浜辺はまるで伝説にある桃源郷のような、この世のものとはえぬ美しい所でした。
砂浜のろにはい緑の森がうっそり広がっておりました。
しかしの残骸やの者の姿は見当たりません。