"置き去り嫁の南国裁き" 第1話
「これからはに1度だけ会おうね。あ、あなたの分の代はないから、自腹でよろしく」
誰もいない、え切った暗いリビングで、私ののの便箋がかさりと乾いた音をてた。
見渡せば、昨までそこにあったはずの級ソファも、型テレビも、ダイニングテーブルも、何ひとつ残っていなかった。観葉植物も、飾り棚も、私が毎拭いていたガラスのローテーブルも消えている。
そして何より、私の夫であるはずの男の姿さえ、このから忽然と消えていた。
だが、この、私を置いてへびった浮かれきった義族たちは、誰ひとりとしてらなかった。
私というをこけにして捨てたことで、彼らが数、血の涙を流し、面にいつくばることになるという未来を。
そのの夜、私は実から戻ってきたばかりだった。
「ふう……やっと着いた」
いキャリーケースを引きずりながら、私はきく息を吐いた。刻は午8を回っている。実の母が急に体調を崩し、私は1週ほど泊まり込みで病をしていた。ともに疲れ果て、ただくに戻って横になりたいとっていた。
見げた先にあるのは、都内の閑静な宅につ派な世帯宅だった。
1階には義父の夫、義母のより子、義妹のリナが暮らしている。2階には私、百と夫の拓也が暮らしていた。
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けれど、その夜のは妙だった。
「あれ……気がどこもついていない」
普通なら、1階のリビングから漏れるかりが庭の植え込みを照らしているだった。私は実から帰ることを、事に拓也にも義母にも連絡していた。それなのに全体が、まるでんだように暗く静まり返っていた。
胸の奥で、警鐘のようなものがじりじりと鳴り始めた。
私は急いで鍵を取りし、玄関のドアをけた。
「ただいま。拓也? お義母さん、いますか?」
返事はなかった。
それどころか、玄関のたたきに並んでいたはずの族全員の靴が、1残らず消えていた。
「え……棒?」
血の気が引くのをじながら、私は靴も脱がずにのへ駆けがった。
「拓也! 拓也、どこなの!」
2階の居スペースへ続く階段を駆けがり、勢いよくリビングのドアをけ放った。
そこに広がっていたのは、信じられない景だった。
「嘘でしょう……」
部はがらんとしていた。
具も、も、壁に飾っていたさな額縁も、私が入れしていた観葉植物すらもない。活の痕跡が、見事なほど削ぎ落とされていた。
棒にしては際がよすぎる。
何より、これは盗難というより、完全な引っ越しだった。
パニックになりかけたで、私は震える指先をかし、スマートフォンで拓也に話をかけた。
けれど、に届いたのはたい自音声だった。
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「おかけになった話番号は、現使われておりません」
私はすぐに義母へかけた。
義父へもかけた。
リナへもかけた。
結果は、すべて同じだった。
全員の連絡先が、完全に絶たれていた。
その、キッチンカウンターのにぽつんと置かれたい封筒が目に入った。
表には、義母の丸みを帯びた見慣れた字で、こうかれていた。
「百さんへ」
私は息をのみ、震えるで封筒をけた。
からてきたのは、義母が好んで使っていたいの匂いが染みついた1枚の便箋だった。
そこには、あまりにも軽い調子でこうかれていた。
「百さんへ。突然だけど、私たちはへ移することにしました。ずっとだったのよ。国の級リゾートでのセレブ活。
あ、もちろん拓也も緒よ。あの子は、百みたいなで貧乏臭い女とはもう暮らせないって言ってたから、私たちが連れてってあげることにしたの。
あなたの作る貧乏飯にはもううんざりだったしね。これからは毎、流シェフの料理をべるわ。
あなたはうちの政婦みたいなものだったし、もう用済みだから置いていくわね。
これからはに1度だけ会おうね。あなたの分の代はないから、自腹でよろしく。
じゃあね。底辺の活を本で頑張って」
便箋を持つが、ぴたりと止まった。
私は声をすことすら忘れていた。
数秒の沈黙が、気なほどリビングを支配した。