"十一年目の父欄" 第8話
嫁入りの着物を放したこと。
医療費や塾代のために、自分の治療を回しにしてきたこと。
それらもすべてった。
浩は母を責めなかった。
過の判断を責任として引き受けるのは、自分でもあると考えたからだ。
青里奈の所は、依然としてだった。連絡先の古い記録は残っていたが、無理に探すことは控えた。子どもたちの活が定することを優先した。
将来に説が必なが来れば、そのに誠実に向きう。
浩はそう決めた。
庭内に劇な変化はなかった。
祝福も、抱擁も、涙の解もなかった。
々の活が続くだけだった。
朝の準備。
学の予定。
卓での会話。
浩はそこにいる。
張の予定を最限に抑え、夕方には帰宅する。約束をにするのではなく、予定表を共し、実するようになった。
11は戻らない。
優太の最初の言葉も、ひなの入学式も、浩はらない。
けれど、を悔やむだけでは何も変わらない。
父としての役割は、過の償いではなく、現の選択で形づくられる。
浩は会社の計画を見直した。売目標よりも定をし、無理な拡張を避ける方針に切り替えた。を確保するためだった。
成功の定義を修正した。
規模ではなく、持続能性。
会社だけではない。族にも同じことが言えた。
ある夕方、浩は玄関に並んだ2つのランドセルを見つめていた。
広告
最初に帰国した、その景は自分のを揺るがす違だった。
今は違う。
それは、ここに活があることの証だった。
幸子が廊の奥から声をかけた。
「浩、ご飯できたわよ」
「今く」
リビングからは優太の声がした。
「この問題、あとで聞いてもいいですか」
ひなはさな声で言った。
「プリント、までだから」
浩は靴を揃え、ゆっくりリビングへ向かった。
戸籍には、同じ姓が並んでいる。
幸子。
浩。
優太。
ひな。
その記録は、法律の関係を示している。だが、族であるかどうかは、々の選択によって決まる。
浩はもう、「必ず戻る」と繰り返す男ではなかった。
帰ると言うのではなく、ここにいる。
その事実を、毎積みねていく。
失ったは戻らない。
けれど、残されたをどう使うかは、まだ選べる。
玄関に並んだ2つのランドセルは、もう浩を拒むものではなかった。
それは、彼がこれから引き受けていくのさを、静かに示していた。