"48億の離婚届" 第1話
静岡県の方都に、いをかけて築かれてきた1つの庭があった。
恵子、59歳。
彼女はその、自宅のリビングで、夫の浩司と向かいって座っていた。午のはいつもと同じように窓から差し込み、庭のがにく揺れていた。壁の計はさな音をてていている。器棚も、瓶も、ソファの位置も、昨までと何も変わらなかった。
変わっていたのは、夫の元に置かれた茶封筒だけだった。
浩司は61歳。静岡県内で法律事務所を構える弁護士であり、域社会でもい評価を受けてきた物だった。穏やかな話し方と誠実な仕事ぶりでられ、依頼からの信頼もかった。
その浩司が、封筒から数枚の類を取りした。
恵子は、すぐにはそのを見なかった。夫の表を先に見た。そこに迷いがあれば、問いかけることができたかもしれない。そこにりがあれば、まだをぶつけう余があったかもしれない。
しかし浩司の顔は、驚くほど平静だった。
彼は類をえ、テーブルの央に置いた。
「これを見てほしい」
声はく、事務だった。
恵子はゆっくり線を落とした。
最初に目に入ったのは、婚届という文字だった。
その隣には、婚条件に関するが添えられていた。付、氏名、財産に関する項目、活支援の内容。
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それらが然と並んでいる。
恵子はの端を見つめたまま、しばらく何も言えなかった。
い結婚活が、鳴り声でも、涙でも、喧嘩でもなく、えられた面として差しされていた。
「続きは、できるだけ穏便にめたいとっている」
浩司はそう言った。
その言い方は、庭の話というより、依頼に説する弁護士の調にかった。を刺激しないよう選ばれた言葉。責任の所を曖昧にしながらも、結論だけは揺るがせない声。
恵子はようやく顔をげた。
「もう、決めたのね」
問いではなかった。
確認だった。
浩司はくうなずいた。
「これからのを考えた結果だ」
その言葉のに、しだけ沈黙が落ちた。恵子は自分の膝のでねたを見た。32、事をし、来客を迎え、夫の仕事を邪魔しないよう活をえてきただった。域の事にるも、浩司のを考えて言葉を選んできた。親戚付きいも、所との関係も、庭の内側の細かな調も、彼女は静かに引き受けてきた。
それらのが、今、目のの1枚のによって区切られようとしていた。
浩司は続けた。
「相がいる」
恵子の線がわずかにいた。
「静岡県内の方メディアで働いている女性だ。齢は……君より30歳以若い」
恵子は瞬きをした。
胸の奥に衝撃はあった。けれど、それは激しく燃えるりではなかった。
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むしろ、氷を静かに注がれるような覚だった。現実がく、体のだけがえていく。
浩司はその女性についてくを語らなかった。若さや将来性、しい価値観。そうした言葉を慎に選びながら、自分の選択を説した。
恵子を責める言葉はなかった。
結婚活を否定する言葉もなかった。
だが、それは優しさではなかった。
連れ添った相を傷つけないための配慮というより、な衝突を避け、続きを円滑にめるための理だった。
恵子は、類のに置かれた浩司のを見た。
そのは何度も法廷の面をめくり、契約に目を通し、依頼のを法律の言葉に置き換えてきただった。
今、そのが、自分たちの32を同じように理している。
恵子はく息を吸った。
鳴ることはできた。
泣くこともできた。
けれど、そのどちらも今の彼女にはかった。
「分かりました」
自分でも驚くほど静かな声がた。
浩司はしだけ目を伏せた。
その仕が堵なのか、罪悪なのか、恵子には分からなかった。
リビングには、再び計の音だけが戻ってきた。
の景は変わらない。
しかし恵子のは、この瞬から、もう昨までとは違っていた。
婚に関する条件は、すべて法にえられていた。
恵子はを受け取り、自の机に広げた。
のには、活支援、居、財産、今の連絡方法に関する項目がきれいに並んでいた。