"いただきますのない食卓、私は家を出た" 第18話
プラスチック容器に入った来いのおかず、な目玉焼きを無言でべるたび、族の誰もが同じいを抱いていた。
「お母さんの温かいご飯がべたい」
だがその言葉をにすことは誰にもできなかった。
自分たちの傲さと無神経さが、あの温かい卓を永に壊してしまったのだと、今では痛いほど理解していたからだ。
そんな、族ので番きく変わったのは女の彩佳だった。
彩佳は派遣先から帰宅すると、毎晩のように台所につようになった。
最初は包丁の使い方も危なっかしく、野菜つ切るだけでもかかっていた。
加減が分からずフライパンを焦がしたり、お噌汁のがすぎたり逆に塩辛すぎたりと失敗の連続だった。
あの古いノートにかれていた、自分が仕事で落ち込んだに作ってくれたトマトの温かいスープを再現しようと試したこともあった。
しかし何度作っても、お母さんが作ってくれたあの優しいにはならなかった。
「誰かのために美しいご飯を作るって、こんなに変だったんだ」
傷の跡が残る自分の指先を見つめながら、彩佳は何度も誰もいない台所で泣いた。
あのノートにかれた母の細やかなが、どれほどくの、、いいやりによって成りっていたのか、自分で料理をするようになって初めて、そのみが痛いほど分かったのだ。
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ある休の昼、みわ子が暮らすさなアパートのインターホンが控えめに鳴った。
ドアをけると、さな布の包みを両で抱える彩佳の姿がそこにあった。
「お母さん、突然ごめんなさい」
彩佳はし痩せ、すっかり落ち着いた表になった母の顔を見て、ほっとしたように目を細めた。
みわ子は彩佳を静かに部へ招き入れた。
さなダイニングテーブルに向かいって座る。部の奥からはお汁の優しいりが微かに漂っていた。
「暮らし、お仕事変じゃない?」
「ええ、とても充実しているわ。施設の皆さんも優しいし、やりがいがあるの」
「みんな元気にしてる?」
みわ子の声は驚くほど穏やかだった。
そこにはもう、族に対するみもしみも悔もなかった。
ただの自した女性としての、静かで温かい空気が流れていた。
彩佳はさく頷き、膝のに置いていた布の包みをゆっくりとテーブルのに置いた。
「あのね、お母さん。私、最しずつお料理の練習をしているの。まだ全然くそなんだけど」
包みをくと、にさなお弁当箱が入っていた。蓋をけるとつのおにぎりが並んでいる。形はしいびつで、苔の巻き方も器用だった。
「これ、私が作ったの。お母さんにべて欲しくて」
彩佳の言葉に、みわ子は驚いたように目を見いた。
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「私ね、お母さんが残してくれたあのノートを何度も読んで、自分で台所につようになって、やっと分かったの。毎族の体調を考えてご飯を作ることがどれだけすごいことだったか、どれだけいが必なことだったか」
彩佳の目からボロボロと粒の涙がこぼれ落ちた。
「お母さんのご飯、本当に美しかった。何の見返りも求めず、ずっと私たちを守ってくれて、本当にありがとう。今まで何も気づけなくて、空気みたいに扱ってしまって、本当にごめんなさい」
彩佳は泣き顔のまま、精いっぱい笑顔を作り、おにぎりの入ったお弁当箱をそっと差しし、くをげた。
「お母さん、いただきます」
それは彩佳がので、初めて母の無償のに対し、から返した言葉だった。
みわ子は震える彩佳のさな肩をじっと見つめ、そっとを伸ばし、格好なつのおにぎりを両で優しく包み込むようにに取った。
ゆっくりとかじる。しご飯の炊き加減がく、塩のがしい。
それでも違いなく、娘の彩佳が自分のためだけに懸命握ってくれた、何よりも温かいのがした。
「美しいわ。とっても」
みわ子の目から静かに涙が溢れした。
夫からの支配も、義母からのない言葉も、子供たちのの無関も、全て背負ってち続けた。