"いただきますのない食卓、私は家を出た" 第14話
「お父さん、まだ続きがあった」
彩佳の声はひどく震えていた。
そのただならぬ様子に、男の翔太もお腹を抑えてうずくまっていた次男の匠も、斉に彩佳の元へと線を向けた。
最のページには、それまでの丁寧でった文字とは違う、し乱れて震えたような文字でい文章が綴られていた。
彩佳は溢れる涙を拭おうともせず、その文章をゆっくりと読みげ始めた。
毎族が元気に過ごせるようにと祈りながら台所にってきました。
でも誰も私の作った料理を見てはくれません。誰の目にも私は映っていません。
私はただ、族と笑いいたかった。便利な具ではなく、緒にびを分かちえる族でいたかった。
いつか誰かが気づいてくれますように。
彩佳が読み終えた瞬、リビングはを打ったような静寂に包まれた。
「いつか誰かが気づいてくれますように」
その細やかな願いは、27 みわ子がで抱え込み、誰にも見せずみ込んできたの叫びそのものだった。
孝志の脳裏に、これまでの々の景が馬灯のように蘇える。
自分はテレビを見ながら無言で箸をかしていた。子供たちはスマホやゲームにになり、かよはがいと文句を言うだけ。
その、みわ子はどんな気持ちで自分たちのたい姿を見つめていたのだろうか。
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「俺たちは料理を作らせていたんじゃない」
孝志は絞りすような声で呟いた。
「みわ子のを毎い潰していただけだったんだ」
そうだ。毎の事はただの事ではなかった。
自分の胃の調子を気遣うおかゆも、翔太の疲れを癒す唐揚げも、彩佳を慰める温かいスープも、匠の夜のうどんも、かよの血圧を考えたの煮物も、全てが彼女のそのものだった。
自分たちはそのを全て受け取りながら、度も「いただきます」という謝の言葉すら返してこなかったのだ。
そして今、みわ子は気づいてしまった。このには自分のを受け止めてくれるは誰もいないのだと。
だから彼女は静かに卓から姿を消した。
料理を作るのをやめたのではなく、自分たちを見放したのだ。
その悔のが孝志の胸を押しつぶしそうになったそのだった。
「はい」
にスマートフォンから静かな声が聞こえた。呼びし音が止まり、通話が繋がっていたのだ。
「みわ!」
孝志は弾かれたように叫び、スマートフォンを両でに押し当てた。
翔太も匠も、ソファで横たわるかよも斉に顔をげる。
「みわ、お今どこにいるんだ?無事なのか?」
孝志はすがるような声で叫んだ。
「姉のにいます」
話の向こうの声は驚くほど穏やかだった。っている様子もしんでいる様子もない。
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それが逆に孝志をひどくにさせた。
「悪かった、俺が違っていた。全部俺が悪かったから。頼む、今すぐ帰ってきてくれ。のがむちゃくちゃなんだ。洗濯もできず、ご飯もない。俺も子供たちも限界なんだ」
孝志は体裁を気にせず話越しにをげた。自分がどれほど無力でみわ子に依していたか、認めるのは屈辱だったが、今はそんなプライドを気にする余裕などなかった。
「母さんも倒れそうなんだ。薬の所も病院の名も誰も分からない。おがいないとこのはもう終わりなんだよ」
すると孝志の背で横たわっていたかよが、最の力を振り絞るようにを起こし、スマートフォンに向かって声を張りげた。
「みわさん、私も悪かったわ。事のがいなんて言ってごめんなさいね。だから事のことくらいでげさにしないで、く帰ってきてちょうだい」
かよのその言葉を聞いた瞬、孝志はハッとした。
「事のことくらいでげさ」。それはかよが何気なくにした、いつもの言い訳だった。しかし今の状況で、その言葉はあまりにも致命だった。
「ち、違うんだみわ、ほら母さんは悪気がないんだ。寄りの言うことだから気にしないでくれ。だから嫌を直して」
孝志は慌ててフォローしようとで捲してた。
謝れば許してもらえる、自分たちが困っていると伝えれば、あの優しいみわ子のことだから必ずんで帰ってきてくれるはずだ。