"いただきますのない食卓、私は家を出た" 第11話
みわ子が働いている所の介護施設の厨。あそこにけば必ず会えるはずだ。
ただの調理補助のパートなんか、俺がってすぐにやめさせてやる。そして無理やりにでもに連れて帰るんだ。
孝志はまだ、自分の夫としての権力が通用すると信じたかった。
自分が養ってやっているという優越だけが、崩れかけた自尊をギリギリで支えていたのだ。
「母さん、今はし横になっていてくれ。俺が必ずみわ子を連れ戻してくるから」
孝志はかよをソファに寝かせると、急いでスマートフォンで介護施設の話番号を検索した。
「もしもし。松井の夫ですが、妻は今そちらに勤していますか?」
話にた職員に、孝志は圧な声で尋ねた。
「ああ、松井さんのご主ですね。々お待ちください。今責任者の佐藤に変わります」
話が保留になり、孝志はし得げにを鳴らした。
責任者がてくれば話はい。庭の事で妻をすぐにやめさせると伝えれば、パートの主婦くらいすぐに放すに決まっている。
しかし話を代わった施設の責任者・佐藤のからた言葉は、孝志のっぺらない込みを根底からこなごなに砕き散らすものだった。
「松井さんのご主ですか?ちょうど良かった。実は奥様のことでご報告がありまして」
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孝志はまだ気づいていない。自分がの世界では通用しないと見していた妻が、自分には到底の届かない輝かしい所にち始めていること。
そしてこの話が、孝志の傲さに最の撃を与える引きになることを。
「松井さんのご主ですか?ちょうど良かった。実は奥様のことでご報告がありまして」
話越しの佐藤の声はとても丁寧でるかった。
孝志はふんぞり返るようにしてきく息を吸い込んだ。自分がまだ絶対な支配者であると疑わずに。
「ああ、ちょうどいい。実は妻を今でそちらからやめさせようといましてね。庭の事です。ただのパートの主婦ですから、急にやめても代わりはいくらでもいるでしょう」
話の向こうで数秒の自然な沈黙が落ちた。
そして佐藤が信じられないというような声をした。
「やめさせる?ご主、体何をおっしゃっているんですか?」
「ですから主婦の暇つぶしのパートなんて、私が許さないといえばそれまでだということです。私はあいつの族カードも活費の座も全て止めました。今頃おもなくて泣いているはずです。そちらにいるなら今すぐ座してに帰るように伝えてください」
自分の力を誇示するように言い放つ孝志。
しかし佐藤の調は、先ほどまでの穏やかなものからし厳しいものへと変わった。
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「ご主、奥様から何も聞いていらっしゃらないのですね。松井みわ子さんは昨、当施設の正社員として雇用契約を結びました。パートではありません。私たちの厨を統括する、番切な責任者です」
「正社員……?」
孝志はの抜けた声をあげ、シワだらけのシャツの首元を掴むが固まる。
「50 を過ぎた資格もない主婦が正社員?何かの違いだろう。あいつはでご飯を作ることしかできない女なんですよ」
「違いではありません。むしろこちらから何ヶもをげて、ようやく正社員になっていただけたんです」
佐藤の言葉は孝志の予をはるかに超えていた。
「松井さんの作るお料理はただの庭料理ではありません。べるの体調や気分、み込みやすさまで計算しつくされた、まさにプロの仕事です。
みわ子さんの作ったお噌汁をむとする、と涙を流してぶ利用者さんが何もいるんですよ。うちの施設にとって松井さんは絶対に放せない、番の宝です」
番の宝。絶対に放せない。
孝志ののでその言葉がガンガンと響いた。
自分が 27 、誰のおかげで毎ご飯をべられているのかと見してきた妻。
でしか役にたない、自分がいなければきていけないとい込んでいた女。
その妻がの世界で、自分以に求められ、され、頼りにされていたというのか。
「あ、あの、それにお料についてですが、正社員としての責任に見った分な額をお支払いします。