"いただきますのない食卓、私は家を出た" 第10話
その言葉は孝志の胸の奥に、たい刃のように突き刺さった。
族との温かい繋がりを、自分たちから切り捨ててしまったのだという現実がくのしかかる。
ソファに横たわっていたかよも、彩佳の言葉を聞いて静かに涙を流し始めていた。
「みわ、ごめんなさいね。私、ひどいことばかり言って」
誰ももう、妻のストライキだなどとがることはできなかった。
自分たちが失ったものは、事をしてくれる便利なではない。
この全体を温かく包み込み、かしてくれていた臓そのものだったのだ。
孝志は震えるでスマートフォンを握りしめた。
そして慌てて通話ボタンを押し、みわの番号を発信した。
だがスピーカーから聞こえてくるのは、無質な呼びし音だけだった。
彼は気づき始めていた。
妻はもう自分のの届かない所へってしまったのかもしれないという、恐ろしい真実に。
「クソ」
なぜない?
孝志は腹してスマートフォンをソファに投げつけた。
何度話をかけてもみわはない。
メッセージを送っても既読すらつかない。
昨まで「どうせおがなくなれば泣いて戻ってくる」とをくくっていたに、初めて焦りというが湧いていた。
テーブルのに置かれた『族のこと』とかれた古いノート。
そこには自分がどれほど妻に守られ、甘やかされてきたかが、残酷なほどはっきりと記されている。
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それを認めるのが怖くて、孝志はノートから目をそらした。
ただのっ張りだ。俺が折れるのを待っているだけなんだ。
自分にそう言い聞かせるものの、のの荒れ放題な景が、彼のがりをあっさりと打ち砕いていく。
をてから 4 目の朝、松井の活能は完全に止していた。
「おい、洗剤はどこにあるんだ?洗濯の回し方が分からん」
洗面所で男の翔太が鳴り声をあげた。
今着てくシャツがない。翔太は自分で洗濯をしようと試みたものの、洗剤のボトルすら見つけられないのだ。
孝志もまたシワだらけの古いシャツをにち尽くしていた。
アイロンがどこにしまってあるのか、どうやってシワを伸ばすのか全くわからない。
「お父さん、もう無理だよ。俺 3 ずっとコンビニ弁当で胃が痛くなってきた。お母さんのお噌汁がみたい」
次男の匠がお腹を抑えながらリビングに現れた。
こんなにスマートフォンから目をさずに無言でべていた料理が、どれほど自分の体を守っていたか痛したには、もう遅かった。
そこへ姑のかよが青ざめた顔で寝からうずくまるようにしててきた。
「孝志、苦しいの。病院へ連れてってちょうだい」
血圧の薬をめていないかよは、らかに体調を崩していた。
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「分かった、すぐにくぞ。母さん、診察券はどこだ?病院の名は何て言うんだ?」
慌てて尋ねる孝志に、かよは々しく首を振った。
「分からないわ。いつもみわ子がで連れてってくれていたから、先の名も病院の所も覚えていない」
「嘘だろう」
孝志は愕然とした。自分の母親の通院先すら俺はらないのか。
母親がどんな薬をみ、どんな治療を受けているのか、全てみわ子に丸投げし、自分は男としての責任を果たしているとい込んでいただけだったのだ。
「クソ、どうなってるんだ、このは」
孝志はを抱え込んだ。
朝も綺麗なも族の健康、母親の命さえも、ただの主婦だと見していた妻がで完璧に管理し、を回していたのだ。
計を見ると、もう自分が会社へ向かうだった。
しかしシワだらけのシャツを着て、悪臭漂うゴミのを残し、具の悪い母親を置いて、どうやって仕事へけばいいというのか。
このままでは俺の活が完全に崩壊してしまう。が孝志の全を駆け巡る。
とにかくみわ子を連れ戻さなければならない。どんな段でもあの常を取り戻さなければ、自分たちはきていけない。
そうだ、パート先だ。孝志のにつの考えがひらめいた。