"いただきますのない食卓、私は家を出た" 第7話
「先お話しした正社員採用の件ですが、お返事はいかがでしょうか?」
夫の孝志はみわ子のパートをただの主婦の暇つぶし、遣い稼ぎと見していた。
しかし現実は全く違う。
みわの作る料理は、この施設を利用するお寄りたちや働く職員たちから絶な支持を集めていたのだ。
「みわさんの作るお噌汁をむと、なんだかほっとして涙がるんだよ。付けが本当に優しくて、毎ここにご飯をべに来るのが楽しみなの」
そんな温かい言葉が毎のようにみわへ届けられていた。
佐藤からも「松井さんの料理の腕と、べるへの細やかな気配りは、うちの施設にとってなくてはならないものです。非正社員として厨を任せたい」と、ヶから烈なオファーを受けていたのだ。
みわ子は背筋をまっすぐに伸ばし、佐藤の目をしっかりと見てはっきりと答えた。
「はい。私でよろしければ、非お願いいたします」
その言葉を聞いた瞬、佐藤の顔に嬉しそうな笑みが広がった。
「本当ですか?よかった。ありがとうございます。これで利用者さんたちもびますよ。松井さんがいてくれれば、この施設の事は百力です」
くをげる佐藤を見ながら、みわ子の胸にいものが込みげてきた。
「こちらこそ、私を必としてくださって本当にありがとうございます」
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ふと夫のメッセージがをよぎる。
「おみたいなパート主婦がおもなしにできていけるわけがない」と送ってきた。
私を経済力のない無力なだと信じて疑わない夫。
し脅せば泣きながら座して帰ってくるとい込んでいる。
だがみわは決して衝にをびしたわけではなかった。
数ヶから姉のゆみ子に「もうが限界かもしれない」と相談をねていた。
そしてこの正社員への打診を受けた、みわ子は自分のでつという決を固めたのだ。
あの夜、族が誰「いただきます」と言わなかったあのたい卓は、ただの最の引きに過ぎない。
みわ子はすでにしいを歩み始める準備を、静かに、そして確実にえていたのである。
「さあ、皆さんが待っていますから、お昼の準備に戻りますね」
みわ子はれやかな顔でちがり、再び厨へと戻っていった。
彼女の背には、もう 27 の苦しいはなかった。
方、その頃女の彩佳は、派遣先の会社の休憩で、お弁当の代わりに買ったコンビニのサンドイッチをかじっていた。
お母さん、今頃どうしてるんだろう?
父親はおを取りげれば泣いて戻ってくるとっていた。
しかし、彩佳の胸の奥に渦巻くは、が経つごとにきくなっていった。
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なぜか、もう度と母親が帰ってこないような、そんな恐ろしい予がしていたのだ。
彩佳は通勤カバンをけ、昨台所の引きしの奥で見つけた古いノートを取りした。
表に『族のこと』とかれた、しあせたノート。
しだけ見てみようかな。
彩佳はためらいながらも、その表をそっとめくった。
えっ。
最初のページを見た瞬、彩佳の目はきく見かれ、持っていたサンドイッチがから滑り落ちそうになった。
そこには彩佳が全く像していなかった、ある記録がびっしりとき込まれていたのだ。
それはただの料理のレシピ帳でも、ありふれた計簿でもなかった。
お母さん、これ嘘でしょう?
彩佳は震えるで次のページ、また次のページとめくっていく。
ページをめくるたびに彩佳の目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。
そして自分たち族が母親から何を奪っていたのかという、取り返しのつかない恐ろしい事実に、ついに気がついてしまったのである。
派遣先の休憩で彩佳は震えるでノートのページをめくっていた。
そこには族 5 分の詳細な記録が、何にもわたってびっしりとき綴られていたのだ。
3 12 、あやか仕事で嫌なことがあったのか元気がなかった。夕飯は彩佳が好きなトマトの温かいスープにする。
しでもが休まりますように。