"いただきますのない食卓、私は家を出た" 第6話
昨夜はなんとなくくのが怖くて、まだを読んでいなかった。
しかし父親のあまりにもたい言葉を聞き、彩佳の胸の奥にざわめくようなが広がり始めていた。
「お母さん、本当に困って泣いてるのかな?帰って来られるのかな?」
方、その頃で駅れた所にある姉のマンションの台所には、みわ子がっていた。
「みわ子、本当に際がいいわね。なんだか級な旅館の朝ご飯みたい」。
ダイニングテーブルに座る姉のゆみ子が穏やかな声を漏らす。
テーブルのにはふっくらと焼かれた卵焼き、ほうれんのごまえ、そしてだしのりが優しくち昇るお豆腐のお噌汁が並んでいた。
どれも特別な材ではない。しかしみわが自分のため、そして自分を温かく迎えてくれた姉のためにを込めて作った朝だった。
「そんなげさなお料理じゃないわよ。お姉ちゃんに会えて嬉しいけど」。
微笑みながらエプロンをした、エプロンのポケットに入っていたスマートフォンがブーっとく震えた。
画面を見ると夫の孝志からのメッセージだった。
画面に表示された文章を読んだ瞬、みわの表がしだけ曇った。
「どうしたの?あの旦から?」
ゆみ子が配そうに覗き込む。
「ええ、カードを止めたからおがなくて困っているだろうって。
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謝るなら許してやるっていてあるわ」。
ゆみ子は呆れたようにため息をついた。
「信じられない。どこまでから目線なのよ。みわのことを、自分でおも稼げない無力なだと本気でっているのね」。
みわは静かにスマートフォンをテーブルに伏せた。
昔からそうだった。しでも私が見を言おうとすると、夫は決まって「誰のおかげでご飯がべられているんだ」と私を追い詰めた。
「おは事だけしていればいい。の世界では通用しない」。
その言葉を何回、何百回と聞かされるうちに、私自も自分はでは何もできないなんだとい込まされていた期があった。
だからこそ夫は今も信じて疑わないのだ。
私が経済に追い込まれ、泣きながら許しを請うために必になって戻ってくると。
お姉ちゃん、配しないで。
みわ子は目のにあるお噌汁の椀を両で包み込んだ。
じんわりとした温かさがのひらからへと伝わっていく。
私、ちっとも追い込まれてなんかいないわ。
だって、みわ子は顔をげて静かに微笑んだ。
その笑顔には 27 の呪縛から解き放たれたような、静かでい決が満ちていた。
今、パート先のさんにお返事をするだから。
ゆみ子もしたように優しく微笑み返した。
そうね。めるにくいただきましょう。
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いただきます。
みわ子のるい声が、朝が差し込む部に静かに響いた。
誰の嫌を取る必もない。
誰に文句を言われることもない。
自分がきるための、自分だけの。
族はまだ何もらない。
彼らが見していたただのパート主婦が、の世界でどれほどくのから必とされ、謝されているであるかを。
そして彩佳の鞄ので眠る冊のノートが、やがて松井の傲な常を完全に破壊することになるということ。
昼、みわ子はパート先である介護施設の厨で、真っな調理着をにまとっていた。
トントントンという気良い包丁の音が響く。
きな鍋からはカツオと昆布で丁寧に取ったお汁のりが、い湯気と共に柔らかくち昇っていた。
「みわ子さん、今のお噌汁も本当にいいりね。お腹が空いてきちゃった」
同僚の女性が笑顔で声をかけてきた。
「ありがとう。今はしえるから体を温める具材をめにしてみたのよ。根とごぼう、ニンジンを入れてね」
みわ子も自然な笑顔で答える。
この厨にはたい沈黙も、見すような線もない。
誰もみわを空気のように扱ったりはしない。
ここでは彼女の細やかな気配りや技術が正当に評価されていた。
そこへ施設の責任者である佐藤がやってきた。
「松井さん、お仕事にすみません。しよろしいですか?休憩で」
「はい、ただいま」
を止めて休憩へ向かうと、佐藤は子をめ、真剣な表で切りした。