"十六年目の雪足跡" 第1話
2003214、鹿児島県さつまは、のたいに包まれていた。
とに囲まれ、昔から漁業と農業を暮らしのにしてきたこの域では、夜になると町全体がく静まり返る。ましてそのはバレンタインデーだった。々は夕方になるとめにじまいをし、族や恋と過ごす準備をしていた。
通りに積もったは灯のを受け、く鈍くっていた。普段なら所のから漏れる話し声や台所の音が聞こえるだったが、このはどこか町全体が息をひそめているようだった。
その夜、町の記憶にく刻まれる来事が起きる。
森彩佳、23歳。
鹿児島内の護学に通いながら、病院での臨実習をこなす々を送っていた。実習は朝から晩まで続き、帰宅してからも課題や復習に追われる。教科には付箋が何枚も貼られ、机のには黄いマーカーときかけのノートがいつも広がっていた。
それでもこのだけは、し特別だった。
彩佳は恋の田と夕をとる約束をしていた。は備として働いており、このばかりは仕事をめに切りげ、彩佳と過ごすを楽しみにしていた。
午9過ぎ、彩佳はのでふとちがった。
所にむ齢女性、岸田子に借りていた陶器の器を返そうといしたのだ。
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子はこの町に暮らし、域の々から信頼されているだった。彩佳にとっても、幼い頃から族同然に接してきたである。
器は青との格子模様が入った古い品だった。子が30以も切に使い続けてきたもので、そのの夕方にも温かいみ物を入れて彩佳に渡してくれていた。
「すぐ戻るね」
彩佳はにそう声をかけ、着を羽織った。
財布も鍵も持たなかった。携帯話も寝で充したままだった。所へ器を返すだけのいだったからである。
を踏むさな音が、玄関のへ消えていった。
午947分、彩佳は子のに着いた。
子は玄関で彩佳を迎え、器を受け取った。2の会話は10分ほどだった。のり方やの気、そして彩佳がこれからと夕を楽しみにしていることなど、穏やかな話題ばかりだった。
子は彩佳の顔を見ながら、し疲れているようだとった。だがそれは実習続きの護学なら自然なもので、特別な異常には見えなかった。
「気をつけて帰るんだよ」
子は玄関先まで見送り、彩佳がの方へ歩いていく姿を確認した。
その、子はすぐ内へ戻った。
それが、誰かが森彩佳を最に見た瞬だった。
彩佳が子のをてからの47分。
そのいが、この町の々にとっての謎となる。
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は、彩佳がすぐ戻ってくるとっていた。借りた器を返すだけなら数分で済む。最初は子と話をしているのだろうと考え、計を何度か見ながら待っていた。
しかし10分、20分とが過ぎても、彩佳は戻らなかった。
ではがくなっていた。窓の向こうの暗がりにい粒がい、灯ので細かく揺れている。
は落ち着かなくなり、着をつかんでにた。
子のへ向かうと、玄関からてきた子が驚いた顔をした。
「彩佳ちゃんなら、さっき帰ったよ」
その言葉を聞いた瞬、の胸にたいものがった。
は急いで彩佳のへ戻った。玄関のにち、扉にをかけた。鍵はかかっていなかったのではない。の内側からきちんと施錠されていた。補助錠もかかっている。裏を確認しても、チェーンロックは同じ状態だった。
窓はすべて閉じられていた。の寒さを防ぐために貼られていたビニールシートにも破れはない。
は部のを見回した。
台所のカウンターには、彩佳の財布と鍵が置かれていた。携帯話は寝で充器につながれたままだった。卓には護学の教科とノートが広がり、黄いマーカーと途までかれた課題が残されている。
活の流れが、何かの拍子に突然止まってしまったような景だった。
その夜、町の々はほとんどを避けていた。もく閉まり、通りにはがなかった。