"山寺に消えた妻" 第3話
健斗は計簿を握りしめた。
「こんなに切り詰めていた女が、贅沢をしていた……?」
初めて、胸の奥に疑いがまれた。
翌の午、佐藤が困った顔で会へ入ってきた。
「会、7に奥様と緒にいた男性を見つけました」
健斗はペンを置いた。
「どこにいる。今すぐ連れてこい」
佐藤は類を差ししながら、慎に答えた。
「それが、私たちがっていた状況とは、かなり違うようです。その男性は現、ITベンチャー企業の代表をしています。という物です。会と直接会いたいと言っています」
ホテルのレストランの個で、健斗は拳を握りしめたままを待った。
扉がき、1の男性が入ってきた。7の写真に写っていた幼い青ではなく、きちんとしたスーツを着た落ち着いた男だった。
「こんにちは、会。です」
健斗はちがり、の胸ぐらをつかもうとした。
「貴様のせいで、俺の庭は壊れたんだ。7、どこで何をしていた」
は静かにそのを受け止めた。
「会、まずはこれをご覧ください」
そう言うと、は膝をつき、懐から古びたと学の格証を取りして、テーブルのに置いた。
健斗は眉をひそめた。
「これは何だ」
はくをげ、震える声で答えた。
「私は孤児として育ちました。10歳のから19歳まで、様が私を支援してくださいました」
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健斗の表が固まった。
は続けた。
「奥様は、私にとっておじさんのようなでした。毎しずつおを送ってくださり、勉を頑張れと励ましてくださいました」
「支援……」
健斗は力なく子に座り込んだ。
は格証を指差した。
「7のあの、私は京学に格しました。奥様がお祝いしてくださるということで、お会いすることになったのです」
健斗の声が鋭くなった。
「それでホテルにったのか」
はうなずいた。
「はい。私が帰りの交通費をなくしてしまい、奥様が部だけ取ってくださいました。私はお祝いの挨拶だけして、すぐにました」
の目に涙が浮かんだ。
「ところが数、良子様のの者たちが来ました」
健斗はを乗りした。
「母さんが?」
は拳を握りしめた。
「奥様が倫をしたことにしなければ、私の格を取り消させ、社会に埋葬すると脅されました」
健斗の顔から血の気が引いた。
は涙を拭いながら続けた。
「奥様は、私の将来が閉ざされることを配されました。そして、会がお母様の本当の姿をれば傷つくことを恐れていらっしゃいました」
健斗は震えるでを取った。
そこには、の見慣れた跡があった。
君、派なになりなさい。
私は丈夫だから、絶対に申し訳なくわないで。
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には、乾いた涙の跡が残っていた。
は血を吐くような声で叫んだ。
「奥様は、自ら汚名を背負ってられたのです。私のために、そして会のために」
健斗は全を震わせた。
7、自分を支えていたりとみが、瞬で崩れ落ちた。
彼は子から滑り落ち、に膝をついた。
「ああ……俺は……俺は何てことをしたんだ」
拳で自分の胸を叩きながら、獣のように泣いた。
は健斗のそばに膝をついた。
「会、奥様は会をんでいません。今も、会の幸せを祈っていらっしゃるはずです」
その言葉を聞いた瞬、健斗は胸を押さえて倒れた。
息がうまくできない。
顔が青ざめていく。
は慌ててウェイターを呼んだ。
「救急を呼んでください。く」
救急搬送される内で、健斗は酸素マスクをつけたまま、識がのくでつぶやいた。
「……すまない。本当に、すまない」
病院のベッドで目を覚ますと、健斗は点滴につながれていた。
護師がづき、落ち着かせようとした。
「患者さん、まだ静が必です。点滴を最まで受けてください」
健斗は点滴の針を乱暴に引き抜いた。
「必ない。今すぐ退院続きをしてくれ」
医師が駆け込んできた。
「会、過度のストレスによる呼吸困難です。あと1は入院が必です」
健斗は着をつかみ、断固として言った。
「俺は丈夫だ。
退院する」
30分、健斗は佐藤と共にに乗っていた。
「7、うちで働いていた政婦の連絡先を探せ。今すぐだ」
佐藤は配そうに振り返った。