"盗まれた120頁" 第2話
誠が卒業式でこのスーツを着る姿を像するだけで、胸がいっぱいになりました。
午815分。
両親は京へ向かう夜列のい座席に座っていました。12というい移。内のはく、窓ガラスにはたい結がっていました。
それでも、2の顔に疲労のはありませんでした。元の袋には、スーツと緒にしい革靴も入っています。
息子のれ姿を見届けること。それだけが、2にとって何よりのきがいでした。
これが京への最の旅になる。
2はそう信じて疑いませんでした。
まさかその、チラシを配るために、この線を何百回も往復することになるとはらずに。
誠の学活は、決して華やかなものではありませんでした。
彼が暮らしていたのは、賃3万円、広さ6畳の古いアパートでした。壁はく、になると窓の隙から容赦なくたいが吹き込みました。
誠は両親からの仕送りを断り、活費のほとんどを自分のアルバイトで賄っていました。夜の事現で交通理をし、朝には聞配達をしました。眠を3に削りながら、昼は学の講義を最列で受けていました。
入学より体は5kg落ち、洗濯を繰り返したいシャツの袖には、いつもボールペンのインクが滲んでいました。
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それでも、成績は常に学トップ3%を維持していました。
学4のがまると、誠はアパートにすらほとんど帰らなくなりました。1のうち14を、学の暗い研究で過ごすようになったのです。
机のには100冊以の専と、何千枚もの計算用が積みげられていました。誠が没していたのは、卒業研究の集成となる論文の執でした。
それは単なる学のレポートではありませんでした。専の学術誌に掲載されてもおかしくないほど、度な研究データを含むものでした。
失踪の、1995214午930分。
青森の実の固定話が鳴りました。
母親はちがり、受話器を取りました。
「もしもし」
話の向こうから聞こえたのは、誠の声でした。学構内の公衆話からかけているらしく、背では貨が落ちるさな音がしていました。
「母さん、の朝番で論文を提してから、会に向かうよ」
声はかすれていました。けれど、そこには確かな達成がありました。
「これで僕のは変わる。やっと恩返しができるよ」
母親は目を細めました。
「はえるから、温かいコートを着ていきなさいね」
「うん。父さんにもよろしく言って」
それが、両親が聞いた息子の最の肉声になりました。
数、警察署のたい廊で、母親は誠の同級のをく握りしめていました。
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「あの子は卒業式をどれだけ楽しみにしていたか。命を絶つような理由なんて1つもありません」
同級は線を落としながら答えました。
「僕もそういます。あんなにに研究していたのに、おかしいです」
しかし、その切実な訴えは捜査記録の隅に追いやられました。
警察は、誠が取り組んでいた論文のみを理解していませんでした。
「過労による精神な限界」
たったそれだけの理由で、彼の失踪は片付けられようとしていました。
けれど、誠が命を削ってきげた120ページの研究データは、彼を未来へ導くはずのものではありませんでした。
その論文こそが、彼をたいコンクリートのへ引きずり込む、残酷な引きだったのです。
1995216午。
誠の失踪から30が経過していました。警察は両親を伴い、彼が暮らしていた6畳の古いアパートに向かいました。
玄関のドアにはからしっかり鍵がかけられていました。窓にはカーテンが引かれ、昼でも内は暗く沈んでいました。
から借りたスペアキーが回り、い鉄の扉がきます。
部に踏み込んだ捜査員は、空気の淀みとともにい違を覚えました。
そこは、計画にをしたの部ではありませんでした。
狭い空には、誠の常がそのまま残されていました。
さな台所のシンクには、半分だけの入ったマグカップが置かれています。面には埃も浮いておらず、つい最まで使われていたことが分かりました。