"失敗作のグッバイ" 第5話
「1目でいいから、徹に会わせてほしいの」
舅も続けた。
「しでいい。頼む」
私と夫は目をわせた。
無して追い返すこともできた。
けれど、わざわざまで来た理由は分かっている。ここではっきり言わなければ、また繰り返すかもしれない。
私たちは玄関先にた。
1番、私は言った。
「いきなり来られても、息子には会わせるつもりはありません」
姑はいがった。
「そんなこと言わないで」
夫が静かに尋ねた。
「なんで今さら来たんだ」
姑はし気まずそうにしながら答えた。
「聞を見たの。徹が全国の英語ディベート会で優勝したって」
やっぱりそうか。
私と夫は同に納得した。
姑は続けた。
「あれを見て確信したの。やっぱり私の孫は賢い子だったんだって。失敗作なんて言って悪かったわ。それを謝りたくて」
私はめた目で姑を見た。
「そんな理由で、私の子どもを孫だと認められても嬉しくありません」
姑はきょとんとした顔をした。
「どうして? 何がだめなの?」
「英語ができるから、賢いから、自分の孫だと認めたんですよね。もし英語ができなかったら、徹はまだ失敗作のままだったんでしょう」
「そんなつもりは」
「でも、今言っていることはそういう話です。問題の本質を何も理解していません」
夫も続けた。
「10経っても、ちっとも反省していないじゃないか」
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義両親はなおもをげた。
そのだった。
「何騒いでるの?」
奥から徹が顔をした。
私は慌てて止めようとした。
「徹、てきちゃだめ」
けれど、もう遅かった。
姑は涙ぐんだ目で徹を見た。
「徹ちゃん、きくなって」
を伸ばそうとした瞬、徹は笑顔のまま、英語で何かを言った。
姑は困惑した。
「え、徹ちゃん、今何て言ったの?」
徹はもう1度、はっきりと言った。
それでも姑には分からない。
徹は静かに本語へ訳した。
「僕に話しかけないでくださいって言ったんだよ。おばあちゃん、英語も分からないんだ。失敗作の僕でも分かるのに」
玄関先に沈黙が落ちた。
姑の顔から血の気が引いた。
「し、失敗作って、あなた……」
私はにっこり微笑んだ。
「うちの子ね、あののことを覚えているみたいなんです。まだ2歳だったのに、子どもの記憶力ってすごいですよね」
姑は凍りついた。
「あの、お昼寝じゃ」
「お母さんの話の声がきくて、あまり眠れていなかったみたいですよ」
徹はさらに英語で言った。
舅はしが分かったようで、暗い顔になった。
姑が震える声で言った。
「本語で言ってちょうだい」
徹は笑顔で訳した。
「おばあちゃんのな本語の勉のおかげで、僕は本語が嫌いになったって言ったんだよ」
姑は青ざめた。
徹は淡々と続けた。
「毎毎、ひらがなのカードとか、面くない本を見せられて、本当に嫌だったんだよ」
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姑は驚いたように目を見いた。
「待って、徹。面くない本って、内容は分かっていたの? あなた、文字が読めなかったんじゃ」
徹は首を傾げた。
「つまらないから興を持てなかっただけだよ」
その言葉に、義両親は完全に固まった。
そう。
徹はが悪いどころか、が良すぎた。
そのことに私たちが気づいたのは、徹が4歳のだった。それも本の自己申告でったので、私たち夫婦も最初は驚いた。
徹は記憶力がとんでもなく良く、好きなことはどこまでも吸収する。
ただし、才能にはむらがあった。
楽しくないことにはまったく興を示さない。真面目にやればできるはずのテストも、嫌いな問題は平気でのまます。漢字も読む分には顔負けなのに、く練習は嫌いだから途で投げす。
科学の実験に興を持てば学レベルの識まで調べるのに、公式の丸暗記は嫌いだからテストではスルーする。
するに、徹はし飽きっぽいオタク気質の子だった。
好きなことには全力。
嫌いなことには驚くほど無関。
それが徹の性質だった。
私は義両親を見た。
「お母さんたちの望む“賢い子”とは、だいぶ違いますよ」
義両親は言葉を失っていた。
すると姑が、まだ諦めきれないように言った。
「でもね、孫に会いたいっていう気持ちは本物だったのよ。
私だって反省してるし、もうし……」
「おばあちゃん」
徹がその言葉を遮った。
「僕は自由にきたいんだ。