"隠された十五年の物語" 第12話
聞社の同僚たちは突然のに呆然とし、彼が抱えていた取材の記事は全て途半端なまま残された。
「宮坂の資料はご遺族のもとに保管されているはずです」
話の向こうの編集部員がそう教えてくれた。
宅は宮坂の息子に連絡を取った。
息子は歳を過ぎたのサラリーマンだった。
「父の資料のことですか?」
最初は軽い調子で声をしたが、事を聞くとすぐに協力を申してくれた。
「親父が倒れた、職の机のを全部ダンボールに詰めてもらったんです。それからずっと実の押入れの奥にしまったままで。もしよければ見ていただけますか?」
「ええ、構いません」
「ちょうど理しなければとっていたところでした」
が散らつく半ば、宅とはで宮坂の古い民を訪ねた。
押入れの奥から息子が両で抱えるようにつの段ボール箱を廊にろした。
は聞の切り抜き、取材ノート、古い名刺、ボールペン、賀状の束、記者の机の引きしのをそのまま移したようなものだった。
番目の箱の番底あたりで、それは見つかった。
平成の郵便消印が押された、みのある型封筒だった。
封された形跡はなかった。
封筒の跡は岸本のものだった。
震えてはいたが、万特の細い文字だった。
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宅はその封筒をしばらく両でそっと撫でた。
、この封筒は押入れの奥で誰にもかれず、ただじっと待ち続けていた。
封筒のはに埋めた缶のとほぼ同じだった。
同じ写真、同じカセットテープ、同じノート。
ただしもう冊の予備のノートに加え、夫婦の直のが通同封されていた。
は般の文具で購入したいの便箋だった。
宮坂様
のご助力、誠にありがたくじます。
もしこの記録を世にしていただけるのなら、美ちゃんの魂はきっと救われるとじます。
私たちは復讐をするつもりはございません。
ただ、あの子の最の声を誰かに届けたかっただけでございます。
これからの私たちのことはどうぞお忘れください。
拙ながら、あなた様のご健康をよりお祈り申しげます。
岸本 静
そして便箋の番に、ごくさな文字でこうき添えてあった。
「これからで参ります」
先に記されていたのは県部の辺の町、具体な町名と番がつ記載されていた。
宅はその文字を何度も何度も目で追った。
名のに震えた文字でこう添えられていた。
「あのと、もう波の音だけを聞いて暮らしたくじます」
がその町に辿り着いたのは令の終わりだった。
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京からを乗り継ぎ、内からさらにほど太平沿いのをへった所に、そのさな漁が広がっていた。
の終わりの群馬をびったには、沿いの空気はもうすっかりのものだった。
幹線から細いへ折れ、岸を見ろす坂をっていくと、瓦根の古い民が何軒か連なるにた。
畑を入れしている老がこちらをちらりと見て、軽くをげた。
聞いてもらった番のは、そのの番奥にあった。
焼けした板塀、庭にはさな犀のが本植わっている。
枝にはまだのつぼみもなかったが、畑の緑が青々と茂っていた。
玄関先にった宅はしばらく息をえてから戸を叩いた。
「ごめんください」
奥からゆっくりとした音が聞こえてきた。
引き戸がしずついた。
そこにっていたのは、柄で髪をきっちり束ねたの老女だった。
歳、細だが背筋はまだ伸びていた。
「岸本静さんでしょうか?」
老女は宅の顔をゆっくりと真っすぐに見た。
そしてくくをげた。
「お待ちしておりました」
その声はしわがれていたが、議なほど穏やかだった。
にがると、奥の縁側の向こうにが望できた。
終わりの太平は、の鉛ではなくいを帯び、緩やかにっていた。
縁側の柱には額がつかけられていた。
写真ので麦わら子をかぶった男が笑っている。