"隠された十五年の物語" 第3話
「これは体何だ……」
菅田がつぶやき、寺も首を傾げた。
「夜逃げにしては、あまりに丁寧すぎる。普通、夜逃げならここまで理していかない」
「それに、引っ越してきたばかりのだ。わざわざこのを捨てる理由がない」
は座敷にち尽くし、茶卓ののめ始めたつの湯呑みを見つめ続けた。
その夜、寺は警察署に話し、状況を司に報告した。
話の向こうの司は、く沈黙した、い声で問いかけた。
「犯罪の痕跡はあるか?」
「いいえ、争った跡も、血痕も切ありません。本たちので荷物を持ちしたように見えます」
「借の噂は?」
「町内、融業者、どこに聞いても、切借はないとのことです」
「先のパチンコの当選も本物で、の代も全額支払い済み。親族も子供はなく、寄りもほとんどいない」
司は再びく黙った。
「なら、事件性はない。方届だけしておけ。成の、借もトラブルもない以、警察が介入する余はない」
「解いたしました」
話を切った、寺は駐所の窓から、暮れゆく町の空を眺めた。
の稜線だけが、わずかに赤く染まって残っていた。
翌、夫婦の方届は、警察署の「所」の段ボール箱に収められた。
その箱には、若い、認症で方になった老、族喧嘩で姿を消した女性など、数くの届が眠っていた。
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桜夫婦の類はその番にねられ、やがてしい届に覆われ、の目に触れることはなくなった。
町では最初のヶほど噂が絶えなかった。
「せっかく願のをに入れたのに、どうして消えたんだろう」
「パチンコでを当てて、が変わったのか」
「いや、あのに限って、そんなことはない」
所のたちは買い物のち話や、寺の伝いのに噂しったが、季節が移ろうにつれ、しい来事が町に溢れ、噂は次第にれていった。
、、、そしてのが流れた。
夫婦がんだ古い平はらく無のまま放置され、所権がな物件として町役が管理することになった。
は若い族が借りてみ、その暮らしの老が入居したが、老がくなった、は完全に空きとなった。
平成の代が終わりにづいた頃、この帯は備計画が決まり、古の解体事が決定した。
あの温かかった湯呑みも、茶卓も、犀のりも、すべてがの流れに消えったと誰もがっていた。
だが、誰の目にも触れぬまま、の側のにはつの錆びた缶が、のきにわたり息を潜めていたのだ。
令、の町には例よりく、厳しいが訪れていた。
初めからがい、際のの根はくく覆われる朝が続いた。
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からのは乾いて刺すようにたく、町の々は皆首を縮め、マフラーで顔を埋めて歩いていた。
町れ、かつて桜夫婦がだけ暮らした古い平の敷に、解体業者が入ったのはの朝だった。
の放置で庭のは荒れ、のには巣が張り、かつて美しかった犀のは根元から切り倒されていた。
所権の理が完し、このは駐として備されることになっていた。
現に入ったのは代の親方と、歳の若い職・清のだった。
清は元の業を卒業したばかりで、現の仕事を覚え始めただ。
「清、今はえるな」
「はい、親方、指先が痛いくらいです」
「気をつけろ。古いは釘やら部材やら、わぬものがびしてくるからな」
「解です」
午に根と壁を解体し、午からは内の畳と板を剥がす作業に取りかかった。
座敷の畳は湿気で黒く変し、めくると板の隙から埃や古い聞の切れ端が溢れてきた。
清はバールを使い、奥座敷の板を枚ずつ丁寧に剥がしていく。
古い釘が抜けるたび、きしむ細い音が響いた。
作業の途、側の壁からセンチほど内側ので、バールの先がいものにぶつかり、鈍い音が鳴った。
「ん?」
清は作業を止めた。
に埋もれているのは、普通の具やとは音が違う。