"双子の消えた春" 第8話
子さんは毎朝分の事の支度をしました。信夫さんと子さんの分、そして也と達也の分。湯気のつご飯がよそられたつの茶碗。をつけられることのないその茶碗を、夫婦は毎朝黙って見つめました。事が終わると子さんはめてしまったご飯をそっと片付けるのでした。
それが、来るも来るも繰り返されてきた、夫婦の祈りのような々でした。
団の々も商の々も、あの事件のことを決してにはしませんでした。それは忘れているからではありません。むしろその逆でした。信夫婦のあまりにもいしみを誰もがっていたからこそ、その傷に軽々しく触れることができなかったのです。
所の々は夫婦に会えばこれまで通り穏やかに挨拶を交わしました。洗濯物を回し、お裾分けをし、季節の野菜を分けいましたけれども、誰双子の名をにするものはいませんでした。それはぐるみの優しさであり、同にぐるみであの事件にそっと蓋をしているようでもありました。
そんなにしてといういがゆっくりと過ぎていったのです。
さて、そんなあるのことです。町の駐所にの若い巡査が赴任してきました。駐所というのは、町の々の暮らしの番くにあるさな警察の拠点です。
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古い造の建物で、玄関には赤い丸い灯りがあり、奥にはお巡りさんのまいも兼ねていました。
らく齢のベテラン巡査がで守ってきた所でした。そのベテランが退職し、代わりにやってきたのがこの若い巡査だったのです。坂と言いました。まだ代の、真面目を絵に描いたような青でした。都会の警察学をたばかりで、初めての赴任先がこののさな町。最初はあまりの静かさに戸惑っていたようです。
自転で町内を見回っても、した事件など何も起こりません。落とし物の届けと案内、お寄りの世話の相、それが坂巡査の主な仕事でしたけれども、坂巡査は決してそれを退屈だとはいませんでした。むしろ彼はこの町の々の暮らしにしずつを寄せていきました。寄りに声をかけ、子供たちと言葉を交わし、田畑の様子に目をやる。そうやって町に溶け込んでいくことこそが、駐所のお巡りさんの番事な仕事なのだと、彼なりに分かってきたのです。
その坂巡査があるのこと、駐所の奥の古い棚を理していました。のに溜まった埃だらけの類のです。任のベテラン巡査が残していった古い記録の数々。坂巡査はそれを枚ずつ確かめながら、必なものといらないものを分けていきました。
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するとその類のの奥の方から、冊の古びたファイルがてきました。
あせた表には達な字でこう記されていました。「双子失踪事件関係」
坂巡査はそのに座り込み、ファイルをきました。にはの捜査の記録が綴じられていました。当の聞の切り抜き、刑事からの報告の文章、そして枚の若者の写真。そっくりな顔をした笑顔の双子の兄弟。坂巡査はしばらくその写真から目をせませんでした。
入学式の朝に揃って姿を消し、未だに方が分からない。荷物はそっくり残されたまま、取りはぷつりと途絶えていた。古い記録を読みめるうちに、坂巡査の胸にふつふつとあるいが込みげてきました。この事件はまだ終わっていない。被害者の族は今もこの町で暮らしているのだ。そのたちのしみはが経った今も、しもらぐことなどないのではないか。坂巡査はファイルを閉じ、ちがりました。
そしてそのから彼は休みのたびにある所へを運ぶようになりました。町れの古い階建て団、そのにむ信夫さんと子さんの夫婦の元へです。最初、坂巡査の訪問を夫婦は訝しくいました。駐所のお巡りさんが体何のご用でしょう、と。
坂巡査は丁寧にをげてこう言いました。