"虎姑と賢い嫁" 第9話
おは驚いて、鍵と姑を交互に見ました。
「お義母様、私にはまだ学ぶことがくございます」
「いいや」
お兼ばあさんはを振りました。
「今分かった。私の目より、おの目の方が確かだ。私のより、おのの方が賢い。割れた瓶にを溜め、空の膳を真で満たした嫁なら、このを枯らすことはあるまい」
おはくをげ、両で鍵を受け取りました。
鍵はく、同に温かくじられました。
その夜、奥のからがったおは、庭に浮かぶ満を見げました。
ようやくこの恐ろしい敷が、自分のになったような気がしました。
翌朝、敷の景はし変わっておりました。
お兼ばあさんの部のには、温かい洗顔のが置かれ、台所ではおと婆やが笑いながら朝餉の支度をしていました。以なら朝から塀を越えて響いていた鳴り声が、そのは聞こえません。
代わりに、台所から器の音と、柔らかな笑い声が漏れてきました。
もちろん、お兼ばあさんの気性が1で絹のように滑らかになったわけではありません。にはもしますし、眉を吊りげることもありました。
けれど、理由のない難癖でを困らせることは、嘘のようにを潜めました。
おは蔵の鍵を腰にげ、の切り盛りを始めました。締めるべきところは締め、使うべきところには惜しまず使いました。
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擦り切れた女の着物をしい綿で仕てさせ、の料も分に分け与えたので、使用たちのは増しにおへ向いていきました。
お兼ばあさんはれの縁側に座り、煙管をふかしながら、その様子を眺めていました。表向きは何も言いません。けれど、のでは「したものだ」と満しておりました。
町の噂も変わりました。
「姑が嫁をおうとして、歯が欠けたんだとさ」
「いやいや、嫁が虎を懐けて猫にしたんだよ」
そんな冗談がび交いましたが、そのにはおへの賞賛が満ちていました。
あるの午、隣の夫が遊びに来ました。噂好きのその夫は、お茶をみながら、それとなくおを貶める言葉を投げました。
「お兼さん、嫁の気がすぎると、の男たちの運気を削ぐと言いますよ。田舎育ちだからか、し豪に見えますね」
以なら、お兼ばあさんも緒になって嫁の悪を言ったでしょう。
けれど、そのは違いました。
お兼ばあさんは茶碗をかちんと置き、目を剥きました。
「おや、そなた今、何と言った。うちの嫁は気がいんじゃない。芯がいんだよ。どこで様の嫁を勝に値踏みしているんだい」
その、茶菓子を運んできたおは、障子のでを止めました。
姑がので自分を庇ってくれるなど、ってもみなかったのです。
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胸の奥が温かくなりました。
おは何も聞かなかったふりをして部へ入り、静かに盆を置きました。お兼ばあさんは咳払いをしてらぬ顔をしましたが、がし赤くなっているのを、おは見逃しませんでした。
2のには、言わなくても通じう温かい空気が流れておりました。
やがてがまり、初がる頃、敷では支度が始まりました。漬物を仕込み、薪を積み、布団を干す忙しい季節です。
お兼ばあさんも腕まくりをして台所にちました。
「お、薬がいよ。唐辛子をもっと入れな」
おは笑って答えました。
「お義母様、今の唐辛子は辛うございますのでし減らしました。その代わり、塩をし調えて旨をしてみます」
以なら答えだとが落ちたでしょう。けれど今では、互いの見をしい、最のを探す楽しいになっていました。
の夜、2は奥ので向かいい、綿を打っておりました。
棒で叩く音が、とん、とん、とん、とリズムを刻みます。最初は拍子がわずし乱れましたが、やがて2の音は、まるで1が打っているように揃いました。
しばらくして、お兼ばあさんが先に棒を置きました。
「ふう。私ももうだね。昔は晩でも平気だったのに」
おは姑のしわだらけのを見つめました。そのは、涯このを守るために懸命にきてきた証でした。
おはそっとそのを取り、揉みながら言いました。