"虎姑と賢い嫁" 第8話
読経が終わり、お斎のになると、おの真価はさらにらかになりました。
親戚たちは汁をすすり、目を丸くしました。
「これは見事だ。がいのにくどくない」
「え物も歯触りがよい」
「焼き物もめても脂っこくない」
普段はの肥えた老たちも、箸を置くことができませんでした。
「義姉さん、本当によい嫁を迎えなさった」
「料理の腕もさることながら、先ほどの転。あれはただ者ではありませんぞ」
親戚たちの賞賛がり注ぎました。
お兼ばあさんは照れくさそうに扇をかしながら、わざと無関を装いました。
「田舎育ちゆえ、際だけはよいようですわ」
しかし、その声には以のような刺々しさがありませんでした。嫁を見る目も、ずいぶん柔らかくなっておりました。
客が帰り、敷が静まり返る頃、広にはかりだけが差し込んでいました。
お兼ばあさんは、空になった広に座っていました。今あったことが、馬灯のように胸を巡ります。
嫁を困らせようとした自分の浅ましい計画。
それを恵で乗り越えた嫁の姿。
そして最に、自分の顔をててくれた温かい言葉。
お兼ばあさんは煙管のを落とし、いため息をつきました。
「私の負けだよ。完敗だ」
方、台所では婆やと使用たちがおを囲み、興奮した声をげていました。
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「若奥様、本当にお見事でございました」
「あの面は忘れません」
「奥様も、これからは若奥様を粗末には扱えませんよ」
けれど、おは静かに微笑み、皆をなだめました。
「皆さん、今はお疲れ様でした。お義母様も変お疲れでしょう。片づけは私がいたしますから、皆さんはく休んでください」
使用たちをがらせると、おはさな鍋にを入れ、お焦げを煮始めました。ばしい匂いが台所に広がります。
それから清潔な盆に温かい湯漬けと梅干しを乗せ、奥のへ向かいました。
姑は気疲れで、きっと胃が休まっていないだろう。
そうったからです。
部ので、おは呼吸をえました。
「お義母様、おでございます。腹が空かれたかとい、湯漬けを作ってまいりました。入ってもよろしいでしょうか」
からしばらく沈黙がありました。
やがて、いつもの鋭さを失った声が聞こえました。
「ああ、お入り」
おが入ると、お兼ばあさんは壁を向いて横になっていました。おは静かに盆を枕元に置き、正座しました。
「お義母様、今は1本当にお疲れ様でございました。親戚の皆様のお相で、気力を使われたことでしょう。どうぞ、湯漬けでお腹を落ち着けてくださいませ」
その声には、みも非難もありませんでした。
お兼ばあさんはゆっくり起きがり、湯気のつ椀を見ました。
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ばしい湯漬けの匂いは、どこか懐かしく、母のをわせるような温かさがありました。
匙を取り、すすります。
く優しい汁が喉を通ると、1こわばっていた胸の奥が、するりとほどける気がしました。
お兼ばあさんはようやく、嫁の顔をまっすぐ見ました。
かりを受けたおの顔は、清らかで穏やかでした。
「おは、私が憎くないのか」
初めて、お兼ばあさんは本音をにしました。
「あれほどきつく当たったのに、どうして平然としていられる」
おは静かに微笑みました。
「お義母様を憎むなど、とんでもございません。お義母様はこのの黒柱であり、私の夫を産んでくださった方です。いが吹いてこその根がく張るように、お義母様の教えのおかげで、私はこのの嫁としてくなれました」
その言葉は謙虚でありながら、堂々としていました。
お兼ばあさんはの奥がつんとしました。
自分がさく振るった、嫁はきな器で受け止めてくれたのです。
しばらく黙った、お兼ばあさんは腰元から何かを取りし、おのへ置きました。
それは、ずっしりとい真鍮の鍵でした。
の蔵を管理する、切な鍵でございます。
「持っていきなさい」
お兼ばあさんは、ぶっきらぼうに言いました。
「これからはの切り盛りを、おがしなさい。
私はもう隠居して、し楽をさせてもらうよ」
その声は荒っぽいものでしたが、そこには嫁への信頼と認める気持ちが込められておりました。