"虎姑と賢い嫁" 第6話
おは使用たちを静かに指揮していました。
「汁はいつもより澄んでく。焼き物は形が崩れぬよう丁寧に。え物はをるくしてください」
声に揺はなく、むしろいつもより落ち着いていました。使用たちはその気迫に押され、をかしました。
けれど、おのが平穏だったわけではありません。
料理をえながらも、のでは消えた品々の方を追っていました。
昼過ぎ、おは突きたての餅と温かい茶を盆に乗せ、姑の部へ向かいました。
「お義母様、お茶をお持ちしました」
からしばらく物音がしました。がさごそと何かを片づける音です。やがて、いつもの声が聞こえました。
「入りなさい」
おが障子をけると、部には妙なりが漂っていました。普段焚いているではありません。甘く濃な干し柿のりでした。
お兼ばあさんは慌てて持ちの蓋を閉め、何わぬ顔で咳払いをしました。けれど、おの目はごまかせませんでした。
姑の元には、干し柿のいがわずかについていました。そして持ちの隙から、赤い棗がひとつ転がりていたのです。
謎はすべて解けました。
おはらぬふりをして茶を置きました。
「お義母様、お部に甘いりが満ちておりますね。良いものを切にしまわれているのでございましょう。
広告
準備は滞りなくんでおりますので、どうぞごください」
その言葉に、お兼ばあさんのがぴくりと震えました。
「そ、そうか。うまくやっているなら、それでいい。今は親戚が勢来る。恥をかかぬよう、くれぐれも気をつけるのだよ」
おは静かにをげ、部をました。
そしてので決めました。
罠を暴く。
けれど、姑の顔を潰すのではなく、を守る形で。
それがおの選んだ戦い方でございました。
夕方になると、敷には親戚たちが次々と集まり始めました。
羽織を着た配の男たち、厳しい目をした女たち。彼らは庭に入るなり、落葉のひとつ、畳の端の乱れひとつにも目をらせました。
「しい嫁が来たというのに、庭に落葉が残っているとは」
「田舎育ちだそうだから、作法をっているかどうか」
彼らはお兼ばあさんからもって嫁の悪を聞かされていたのでしょう。粗探しをする気満々でございました。
お兼ばあさんは客に座り、親戚たちに向かってわざとため息をつきました。
「あの娘は田舎育ちですからね。私がいくら教えても鈍くて、言葉が通じないのです。今の法事の膳も、まともにできるか配で」
親戚たちは頷きながら言いました。
「義姉さんもご苦労なさいますな」
「嫁を違えるとが傾くと言いますからな」
広告
お兼ばあさんは表向き配するふりをしていましたが、内ではもなく起こる騒を楽しみにしておりました。
方、台所では婆やが泣きそうな顔でおの袖を掴んでいました。
「若奥様、もうすぐ膳をさねばなりません。果物と干物はどういたしましょう。このまま空いた皿をしては、何を言われるか」
おは婆やのを包みました。
「配しないでください。私に考えがあります。膳には空の皿などがりません。ただ順序がし違うだけです」
おの目には、決然としたが宿っていました。
やがて法事の読経が始まりました。広には灯がともされ、位牌が置かれ、親戚たちは厳かな顔で席に着きました。お兼ばあさんは座の横に座り、台所の方を鋭く睨んでおりました。
さあ、入ってくるがいい。
空の盆を持って座するがいい。
ついに台所の戸がき、おと使用たちが膳を運んで入ってきました。
ばしい匂いが広を満たします。湯気のつ汁、こんがり焼けた料理、艶やかなえ物。どれも美しく、親戚たちの目を引きました。
しかし、膳の最列、本来なら果物と干物が置かれるべき所がぽっかりと空いていました。
広に瞬、沈黙がりました。
すぐにざわめきが波のように広がります。
「これはどういうことだ」
「種の供え物がない」
「魚もないではないか」
お兼ばあさんはこのを逃しませんでした。すっくとちがり、のような声で叫びました。