"虎姑と賢い嫁" 第5話
お義母様のいおのおかげで、もじ入ってを守ってくださったのではございませんか」
自分の柄を誇らず、姑をてる言葉でした。
けれど、お兼ばあさんの腹のは煮えくり返りました。
この噂はすぐに塀を越え、町へ広がりました。
井戸端に集まった女たちは々に囁きいました。
「聞いたかい。お兼ばあさんが割れた瓶にを溜めろと言ったら、嫁が恵で溜めたんだとさ」
「妖術じゃなくて恵だよ、恵」
「戸番恐ろしい姑が、とうとう嫁にやり込められたんだね」
その噂がお兼ばあさんのに入ると、彼女の自尊はきく傷つきました。
「よし。今度こそ、逃げられぬ落とし穴を掘ってやる」
そう言って、お兼ばあさんは次の会を待ちました。
数、の事であるき夫の法事がづいておりました。
法事の膳は先祖を祀る神聖な席です。さな失敗も許されません。もし供え物に備があれば、嫁としての務めを怠ったとして、追いす実にもなり得るのです。
お兼ばあさんは、今度こそ嫁を確実に追いす絶好の会だと考えました。
法事の、お兼ばあさんは密かに蔵へ入りました。
扉を閉め、あたりを見回すと、膳にがるはずの切な品々をそっと取りしました。干し柿、棗、栗、よく干した魚。いずれも法事の膳に欠かせぬ切な供え物でございます。
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お兼ばあさんはそれらを呂敷に包み、自分の部の持ちの奥くへ隠しました。そして何わぬ顔でおを呼び、蔵の鍵を投げるように渡しました。
「今度の法事は、おが切を取り仕切って準備してみなさい。私は体の具が悪いので、気を使う暇がない。おの腕を見せて、ご先祖様に恥じぬよう膳をえるのだよ」
おは、姑が急に蔵の鍵を渡したことを審にいました。けれど、の事を任せてもらえたのだと考え、丁寧に鍵を受け取りました。
「はい。お義母様の御に違わぬよう、精杯準備させていただきます」
おはすぐに蔵へ向かいました。
しかし扉をけた瞬、何やらおかしな気配に気づきました。分に用しておいたはずの貴な果物や干物が、も形もなく消えていたのです。
空の壺を見た婆やは、顔面蒼になりました。
「若奥様、変でございます。棒が入ったのでしょうか。法事はなのに、これでは奥様に目玉をらいます」
婆やは今にも泣きしそうでした。
けれどおは、空の壺を静かに撫でながら考え込みました。
棒が入ったなら、価な器や着物も持っていくはずです。けれど、なくなっているのは供え物に使う品だけ。蔵の戸に壊された形跡もありません。
これはの者の仕業ではない。
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おの脳裏に、お兼ばあさんのたい笑みがよぎりました。
これは盗難ではなく、自分を窮に追い込むための罠。
そう悟った、おの目は静かに沈みました。
今さら「品がありません」と訴えても、管理を怠った嫁のせいにされるのは目に見えています。かといって、へって買い直すにはがりません。
おはいため息をつく代わりに、着物の帯をきつく締め直しました。
「婆や、配しないでください。虎に噛まれても、気を確かに持てば助かると言います。なければないなりに、りなければりないなりに、ご先祖様をお祀りする方法はきっとあります」
そう言って婆やをさせましたが、内では必に考えを巡らせておりました。
法事の朝、敷は戦のような緊張に包まれました。
空はどんより曇り、今にもがりしそうでした。台所では夜けから使用たちがを起こし、器を磨き、料理の準備をめていましたが、誰もきな声をしません。
お兼ばあさんは奥ので横になり、障子の向こうから聞こえる慌ただしい音にを傾け、怪しい笑みを浮かべていました。
「ふん。いくら才覚があろうと、ないものをすことはできまい」
彼女は持ちの奥に隠した品々をい浮かべ、嫁が泣いてすがってくるのを待っていました。
しかし昼になっても、嫁は姿を見せませんでした。台所からはまな板の音と、ばしい汁の匂いだけが絶えず漂ってきます。