"虎姑と賢い嫁" 第4話
「……これは」
布団はどれも丁寧に仕げられ、縫い目ひとつ乱れていません。お兼ばあさんは布団をに取り、あちこち調べましたが、文句のつけようがありませんでした。
それでも悔しさから、顔を真っ赤にして言いました。
「綿を詰めすぎていではないか。寝る者を押し潰す気か」
おは静かにをげました。
「今のは寒さが厳しいと聞きましたので、綿をたっぷり入れました。ですが、ひと晩かけてで丁寧にほぐしましたので、空気を含んで軽く温かでございます。をかけたように軽く、それでいてお義母様のお体を温かくお守りいたします」
その説に嘘はありませんでした。
お兼ばあさんは、またしても言葉を失いました。
布団の件で面目を潰されたお兼ばあさんは、ますます腹をてました。
朝の膳がげられた、彼女は庭をうろつきながら、次の難題を考えておりました。そして裏庭の隅に放置された、古くきな瓶に目を止めました。
その瓶には、底のくに指が入るほどきなひびが入っていました。を入れても、たちまち漏れてしまうことは誰の目にもらかでした。
お兼ばあさんはおを呼びつけ、扇でその瓶を指しました。
「うちの井戸はが良いことで名だ。この瓶にをいっぱいに満たしておきなさい。この瓶はがの運気を貯める器だから、が暮れるまでに波々と満たさねばならぬ。
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もしが半分も入っていなければ、おの誠がりぬせいとして罰を与える」
使用たちは顔を変えました。誰が見ても能な命令です。
婆やは悔しそうに唇を噛みましたが、姑の命令に逆らうことはできません。
おは瓶の状態を目見て、すぐに図を見抜きました。けれど今回も文句ひとつ言わず、桶をにして井戸へ向かいました。
彼女のろ姿は、れというより、何かを決したように頼もしく見えました。
おがを汲み、瓶へ注ぐと、予通りは溜まるもなく底の隙から流れしました。面はみるみる濡れていきます。
れの障子の隙からその様子を見ていたお兼ばあさんは、内ほくそ笑みました。
いくら才覚があろうと、底抜けの瓶にを溜めることはできまい。
おはしばらくを注ぐを止め、割れ目をじっと見つめました。たいが襟元を刺します。のにはが残り、井戸端のたまりはく凍っていました。
その、おのにひとつの恵がひらめきました。
彼女は井戸端に落ちていた藁とを拾い、細かく砕いて瓶の割れ目に丁寧に詰めました。それからを底が濡れる程度にしだけ注ぎ、しばらく待ちます。
寒さは厳しく、注いだはにさらされ、すぐに凍り始めました。
おは自然の寒さを利用して、と藁とを氷で固め、割れ目を塞ごうとしたのです。
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無理に力で押さえるのではなく、候に従って問題を解く方法でした。
しばらくすると、瓶の底は氷とでしっかり固まりました。
おは再び桶を担ぎ、何度も井戸と瓶のを往復しました。もうは漏れません。透な面には、の青空が鏡のように映り始めました。
は赤くかじかみました。袖は濡れ、元のはたくねました。それでもおは息を吹きかけながら休まずを運び続けました。
そして陽がにかかる、そのきな瓶はで満たされ、溢れんばかりになりました。
おは額の汗を拭い、静かに微笑みました。その姿は、まるで勝利した将のようでございました。
やがて、嫁が泣きついているだろうと考えながら、お兼ばあさんが悠々と裏庭へてきました。
しかし瓶を見た瞬、そのが止まりました。
割れて使い物にならないはずの瓶が、満々とを湛えてっていたのです。滴の漏れもありません。
お兼ばあさんは慌てて駆け寄り、瓶の底を調べました。そこは凍りついた氷とで完璧に塞がれており、文句のつけようがありませんでした。
「馬鹿な。お、まさか妖術でも使ったのか」
震える声で尋ねると、おは恐縮したようにをげました。
「お義母様、妖術ではございません。あまりに寒うございますので、が凍るかとい、底を固めてみましたところ、幸いにもが漏れずに溜まりました。