"虎姑と賢い嫁" 第3話
縁側に座ったお兼ばあさんは、庭の隅に積まれたきな瓶を扇で指しました。
「この瓶はがの宝も同然だ。ひとつなく、ぴかぴかに磨いておきなさい。が暮れるまでに終わらなければ、夕飯はないものといな」
瓶は数個もあり、のに溜まった垢がこびりついていました。男が3がかりでも1かかる仕事でございます。それを、お兼ばあさんはおひとりに命じたのでした。
らかな嫁いびりでした。使用たちは顔を見わせ、誰もをせません。
おは瓶を通り見渡すと、静かにをげました。
「はい。お義母様のお言葉通りにいたします」
すぐに布とを用し、庭へ膝をつきました。
お兼ばあさんは縁側に腰をろし、嫁が汗を流して苦しむ様を見物しようと扇を広げました。
けれど、おは辛そうな素振りも見せず、まるでをうように瓶を磨き始めました。布を丸め、瓶の曲線に沿わせ、汚れをしずつ落としていきます。折、かすかなまで聞こえました。
陽がくなるにつれ、瓶はを受けて宝のように輝き始めました。おの額に浮かぶ汗さえ、きらりと美しく見えました。
お兼ばあさんは面くありません。
「苦しんで泣きつくはずが、とは。嫁を違えたか、それともあの娘が抜けているのか」
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夕方、最の瓶まで磨きげたおは、腰を伸ばしてさく息を吐きました。庭はるくなり、使用たちはこっそり嘆の声を漏らしました。
「若奥様はただ者ではないな」
しかし、お兼ばあさんの腹の虫は収まりませんでした。
夜、が濃くなると、お兼ばあさんはおを自分の部へ呼びつけました。
部の片隅には、のように積まれたい綿と布が置かれていました。ひと目見ただけで、10の族がに使う布団を作るほどの量でございます。
お兼ばあさんはたい声で言いました。
「の朝までに、この綿をすべて打ち直し、布団を縫いげておきなさい。今のは寒いという。族が邪を引かぬよう、今夜に仕げるのだ。縫い目が1寸でも歪んでおれば、解いてやり直しとえ」
の力では到底晩で終わる仕事ではありませんでした。廊ので聞いていた婆やは、わず泣きそうになりました。
しかし、おは黙ってのような綿を見つめた、静かに頷きました。
「はい。お義母様。族の皆様の温かい寝のためなら、夜を徹してでも縫いげます。ただ、お義母様のい慈しみがこもる布団でございますので、私が真を込められますよう、蝋燭をもう1本灯してくださいませ」
お兼ばあさんは、嫁が泣いてすがりつくとっていたため、わぬ返答に面らいました。
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「ふん。蝋燭が惜しいからく終わらせるのだよ」
そう言い捨て、部をていきました。
おは残されると、積まれた綿をそっと撫でました。ではが障子を揺らし、い夜が始まろうとしていました。
夜も更け、更に至る頃、部には鋏の音と、針が布を通るかすかな音だけが満ちていました。
おの額には玉のような汗が浮かびましたが、差しは蝋燭の炎のように揺らぎませんでした。普通の者なら夜通しかかっても終わらぬ分量を、おはしも休まずをかしました。
では婆やが眠ることもできず、隙からを覗いていました。婆やの目に映るおの姿は、からりた女がを織るように優雅で、気品に満ちておりました。
おはただく縫うだけではありません。元にく綿を入れ、襟元には柔らかい布を当て、肌触りまで細かく気を配っていました。姑がした無理難題をむどころか、族への贈り物へと変えてしまう遣いでございました。
1番鶏が鳴き、の空がみ始める頃、おは最の結び目を押さえ、糸を切りました。
部には、10が使っても余るほどのふかふかな布団が、然と畳まれていました。朝のを受けたい布は、眩しいほどに輝いております。
お兼ばあさんは、嫁が泣き崩れていると信じ、悪な笑みを浮かべて部へ入ってきました。
しかし目のの景を見て、いたが塞がりませんでした。