"75歳の老婆をと20キロのヒラメ" 第12話
賢治は胸が痛んだ。
毎30万円分の材を買いながら、本はこんなものをべているのか。
ちゃぶ台のには、きなノートが置かれていた。
健太が見たという、あのノートだった。
原刑事が確認のためにくと、そこには細かい文字でびっしりと記録がかれていた。
117ヒラメ20キロ肉90キロ惣菜5万円分果物3万円分子ども11218
118ヒラメ20キロあら追加肉90キロ子ども119「魚が甘い」と言った子あり
119子ども104邪気の子2りんごをめに渡す
賢治はノートの文字を見つめた。
そこには、ただの買い物の記録ではなく、べた子どもたちのさな言葉までかれていた。
「いお刺、初めてべた」
「お肉がやわらかい」
「も来ていい?」
「おばあちゃん、ありがとう」
賢治の界が滲んだ。
浅見さんは恥ずかしそうにノートを見つめていた。
「忘れたくなくて、いているんです」
「忘れたくない?」
原刑事が尋ねた。
浅見さんは写真を見た。
「亮平に報告するためです。今も子どもたちがべたよって。今も、あなたの代わりにしだけできたよって」
が目元を押さえた。
「浅見さんは、毎晩このノートを持って、うちの堂にも来るんです。子どもたちの顔をしだけ見て、すぐ帰るんです。自分が買っていることは言わないでくれって」
「どうして毎、札なんですか」
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賢治はようやく尋ねた。
ずっと引っかかっていた疑問だった。
浅見さんはし困ったように笑った。
「息子のおだからです」
「息子さんの……」
「事故の示談を、そのまま使うことができなくて。でろすたびに、できればしいお札にしてくださいとお願いしていました。汚れたおというではないんです。ただ、子どもたちのべ物に変わるおだから、せめてきれいなおで払いたくて」
賢治は何も言えなくなった。
札だから怪しいとった。
だが浅見さんにとって、それはき息子への礼儀だったのだ。
「でも、どうしてヒラメだったんですか」
健太がさく尋ねた。
浅見さんは写真を見ながら答えた。
「亮平が、子どもの頃からヒラメが好きだったんです」
その声はしだけ柔らかくなった。
「でも、うちは貧乏で、誕にしかべさせてやれませんでした。になってから亮平が言ったんです。お母さん、いつか子ども堂で、みんなにヒラメの刺をべさせたいなって。いものだけじゃなくて、いいものをべたの顔を見たいって」
浅見さんはさく笑った。
涙で濡れた笑顔だった。
「だから、まずヒラメにしたんです」
賢治の目から、こらえていた涙が落ちた。
で30。
い魚を買う客はたくさん見てきた。
宴会のため、見栄のため、贈答のため、商売のため。
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だが、き息子の願いを叶えるために、穴のいた靴を履いたまま毎20キロのヒラメを買う母親を、賢治は初めて見た。
自分はそのを疑った。
犯罪かもしれないとった。
それでも、ここに辿り着けたのは、疑いの奥に配があったからだといたかった。
賢治はくをげた。
「浅見さん、すみませんでした」
浅見さんは驚いて首を振った。
「何を謝るんですか」
「俺は、あなたを疑っていました」
「いいんです」
浅見さんは静かに言った。
「私も、説しませんでしたから」
賢治はをげられなかった。
「でも、これからは1で背負わないでください」
その言葉に、浅見さんの肩がわずかに震えた。
翌、の会議に商たちが集まった。
港産の賢治、森田精肉の拓哉、果物の渡辺さん、惣菜の林さん、組、そして子ども堂のと浦もいた。
浅見さんは最初、来るのを嫌がった。
「私がくような所ではありません」
そう言って何度も慮した。
けれどが迎えにき、賢治もをげて頼んだ。
「浅見さん、これはあなたを責める話じゃありません。これから先、どう支えるかをみんなで考えるためです」
浅見さんはそうにしながらも、会議の隅に座った。
会議は静かに始まった。
まずが、さな灯り堂の現状を説した。
堂は最初、週2回だけいていた。
しかし物価、庭の事、ひとり親世帯の増加で、来る子どもは増え続けた。