"75歳の老婆をと20キロのヒラメ" 第5話
児童施設に寄付しているのか。
そう考えたが、拓哉が首を振った。
「それなら領収をもらうだろう。なのにあのおばあさんは、いつも現だけで払って、領収も求めない」
そのの夕方、老婆が帰った、の商たちは再び集まった。
「、もっと詳しく調べよう」
賢治が言った。
誰も反対しなかった。
老婆に何が起きているのか。
もう、の誰もが無関係ではいられなくなっていた。
翌、賢治は朝くから町を歩き回った。
老婆についてるを探すためだった。
坂のに向かうは細く、古いが並んでいた。に揺れる洗濯物、錆びたトタン根、ひびの入ったブロック塀。その角に、さな雑貨があった。
先で掃除をしていた老に、賢治は声をかけた。
「すみません。この辺に、リアカーを引いて暮らしているおばあさんがいませんか」
老は顔をげた。
「ああ、浅見さんのことか」
「浅見さん?」
「ってるよ。なだ」
老は箒を壁にてかけ、いため息をついた。
「2に息子を交通事故でくしてな。たった1の息子だった」
賢治の胸が、ずきりと痛んだ。
老婆は、息子をくした母親だった。
「それから、古を拾ってなんとか暮らしていた。活保護だけじゃりんからな。朝4から夜遅くまでリアカーを引いていたよ」
「最はどうですか」
賢治が慎に尋ねると、老は首を傾げた。
広告
「3かから古は拾わなくなった。代わりに毎どこかへかけている。何をしているのかはらん」
「ご族は」
「いない。息子さんがくなってからは、ずっと1だ」
賢治はをたもしばらく歩けなかった。
息子をくしたしみ。
古を拾う貧しさ。
突然の。
そのすべてが、どうつながるのか分からなかった。
午2。
老婆、浅見さんはまた港産に現れた。
今で13目だった。
賢治は彼女を見た瞬、昨までとは違うが胸に広がるのをじた。
ただ怪しい老ではない。
息子を失い、ひとりできてきた母親。
その事実をるだけで、曲がった背がよりもずっとく見えた。
「今も、同じものをください」
浅見さんはいつものように言った。
賢治は頷き、刺の準備を始めた。
そのだった。
浅見さんのジャンパーのポケットから、さなものが落ちた。
写真だった。
浅見さんは慌ててそれを拾い、すぐにポケットへ戻した。
瞬だけ、賢治の目に写真が見えた。
若い男の笑顔。
おそらく、くなった息子なのだろう。
賢治は何も言わなかった。
けれど包丁を握るに、自然と力が入った。
14目の朝、賢治がに着くと、健太がすでに掃除をしていた。
いつもより1もい。
「社、僕も気になって眠れなかったんです。あのおばあさんのこと」
健太の目には、ただの好奇ではなく、があった。
広告
「今、僕がおばあさんをつけてみましょうか」
賢治はし迷った。
けれど、もういている額はきすぎた。
これまでに浅見さんがで使ったは、計算すでに数百万円を超えていた。
「ああ。気をつけてってこい。絶対に見つかるな」
午1頃、健太は先回りするためにをた。
午2、浅見さんはいつものように現れた。
今はさらに辛そうだった。歩みは遅く、リアカーを引くにはい絆創膏がいくつも貼られていた。
の隅の子に座ると、彼女は折ポケットから何かを取りして見ていた。
昨落とした写真のようだった。
刺の支度が終わり、浅見さんがってから1ほどして、健太が息を切らして戻ってきた。
「社、見ました」
「何を見た。落ち着いて話せ」
健太はをみ、息をえてから話し始めた。
「おばあさん、本当に坂ののバラックにんでいます。根はトタンで、壁は板で塞いであって、隙からが見えるくらいでした」
賢治は黙って聞いた。
「それで、庭に業務用蔵庫が2台ありました。の値段より蔵庫の方がそうなくらいで……」
「それは俺も見た」
「でも、もっと変なことがあったんです」
健太は声を落とした。
「おばあさん、べ物を蔵庫に入れた、のできなノートを広げて、何か懸命いていました。計算しているみたいでした」
「計算……」
「それから町のに聞いたんです。