"中卒の兄、結婚式で覚醒す" 第9話
さあ皆様、お見苦しいところをお見せしました。歓談を続けましょう。
義父の図で会には再び弦楽奏の音楽が流れ始め、々は何事もなかったかのように事を再した。
残されたのは完全に見される厄介者として孤した敬と、そんな兄の姿をただ見つめることしかできない優馬だった。
敬はほっと息を吐きし、静かに席に座り直した。
これでいい。これで優馬の結婚式は守られた。
額に滲んだ汗をハンカチで拭いながら敬は疲れたように目を閉じた。
しかし彼は決定な見落としをしていた。
自分が徹底に追い込まれ惨めな姿をさらすことが、誰よりも兄をし尊敬している弟のをどれほど無惨に引き裂いているかということに。
メインテーブルにつ優馬の拳からはついにぽたぽたと赤い血が滴り落ちていた。
く握りしめすぎた爪がのひらの皮膚を破っていたのだ。
純のタキシードのズボンに赤いシミがぽつりぽつりと広がっていく。
優馬さん。
異変に気づいたが青ざめた顔で優馬の腕に触れた。
から血が…… どうしたの?丈夫?
しかし優馬はの声にも反応しなかった。
彼の目は血っていた。
その胸の奥底で何かが決定に壊れる音がした。
兄ちゃんは底辺なんかじゃない。
兄ちゃんは誰よりも優しくて、誰よりもくて、誰よりも尊敬できるだ。
広告
俺が医学部にけたのも、俺が今こうしてっていられるのも、全部兄ちゃんが自分のを犠牲にしてくれたからだ。
それなのに俺はまた兄ちゃんに守られている。
兄ちゃんにを被らせて自分だけが綺麗なを着て、こんな汚い連に囲まれてへらへら笑っている。
そんな自分が優馬はたまらなく許せなかった。
もうできない。
義父は今メインテーブルに戻り、満面の笑みで自分の席に座ろうとしていた。
周囲の教授たちから「さすが院、見事な采配ですな」と持ちげられ、嫌でグラスを傾けている。
その傲な顔を見た瞬、優馬のので張り詰めていた理性の糸がぶつんと音をてて切れった。
優馬さん、どこへくの?
青ざめた顔で袖を引くのを、優馬は優しく、しかし断固として払った。
ごめん。しだけ待っていてくれ。
そう言い残し優馬はメインテーブルからゆっくりと歩みた。
純のタキシード姿の郎が突然予定にはないにたことで、会の隅で控えていた司会者やスタッフたちが慌ててき始める。
コツコツコツ、広い披宴会に優馬の革靴の音が異様にきく響き渡った。
列席者たちの線が斉に彼の挙に注がれる。
先ほどまで義父の言葉に同調してへらへらと笑っていた取り巻きの医師たちも、郎のただならぬ雰囲気に気づき黙り込んでしまった。
広告
弦楽奏の優雅な BGM もスタッフの図によって自然に途切れ、会はを打ったような静けさに包まれた。
優馬は司会者がっていたマイクスタンドのまで歩み寄ると、無言でマイクをに取った。
そのにはく握りしめすぎたためにのひらから滲みした血がべったりと付着していた。
しかし優馬は痛みなど全くじていないようだった。
おや、優馬君どうしたんだい?
自分の席に戻りかけていた義父が軽減そうな顔で振り返った。
郎の挨拶にはまだいぞ。
それともあの見苦しい兄の代わりに君から皆様へ謝罪の言葉でも述べてくれるのかな。
義父はニヤニヤと笑いながら優馬の言葉を待った。
周囲の列席者たちも「やはり郎はまともだ、兄のき届きを詫びるつもりだろう」と勝な憶測をひそひそとさやきっている。
しかしマイクを握りしめた優馬のから紡がれたのは謝罪ではなかった。
義父さん。
マイクを通したく震える声が巨なシャンデリアのに響き渡った。
あなたは兄のことをまだ何もらないんですね。
うん?
なんだって?
義父の顔からへらへらとした笑みがすっと消えた。
優馬、やめろ。
親族席から焦った叫び声ががった、敬だった。
敬は慌ててちがり、弟の元へ駆け寄ろうとした。