"中卒の兄、結婚式で覚醒す" 第2話
声をかけてきたのは親戚の叔父だった。
彼は周囲の華やかな列席者たちをチラチラと気にしながら居が悪そうにを縮めている。
すごいもんだな、優馬の嫁さん。あの名な病院の娘さんだろう。あちらさんの親族、みんな学教授らしいじゃないか。
俺たちみたいな般庶民がこんな席に座っていていいのかね。
何を言ってるんですか、おじさん。今は優馬の祝いをするなんですから、堂々としていればいいんですよ。
敬が穏やかな笑顔でなだめると、叔父は「そうは言うけどよ」と息をつき、声を潜めた。
あの病院のお父さん、さっきからこっちを見る目がどうもたいというか、蔑んでるみたいで嫌なじなんだよな。
お、何か言われたりしてないか。
その言葉に敬は数ヶの両顔わせののことをいしていた。
嫁のは名育ちの流庭のお嬢様でありながら、しも華美にかまけたところのない優しく控えめな素らしい女性だった。
優馬にはもったいないくらいだと敬もからんだ。
しかし彼女の父親である病院は違った。
典型な超学歴主義であり、柄や肩きでの価値を図るようなタイプだった。
級料亭の個でわれた顔わせの席、やかな挨拶が済んだ、義父は蔑むような鋭い目で敬を見据えていったのだ。
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それでは敬さんはどちらの学をておられるのかな?
弟さんが優秀な医師ですから、お兄様もさぞ派な経歴をお持ちなんでしょうね。
悪な質問だった。
優馬からは事に「兄はを退して計を支えてくれたんです」と伝えてあったはずなのに、わざと皆ので尋ねてきたのだ。
敬は隠すこともなくまっすぐに相の目を見て答えた。
いえ、私はを退しております。最終学歴は卒になります。
その瞬、義父の顔に確な侮蔑のが浮かんだ。
卒ですか?ご兄弟で随分と違うんですね。環境が同じでもの来というものは変わるものだ。いやはや面い。
ふっとで笑うややかな声。
敬はただ苦笑いで流したが、隣に座っていた優馬は瞬で表を曇らせ、拳をく握りしめていた。
もまた父親のない発言に顔を青ざめさせ、申し訳なさそうに俯いていた。
敬にとっては学歴で馬鹿にされることなど常茶飯事だった。
肉体労働の現でも理尽な扱いを受けることは何度もあった。
その度に歯をい縛り、弟が幸せになれるなら俺がどんなでもすすってやると耐え抜いてきたのだ。
だから義父から見されることなど痛くも痒くもなかった。
自分が卒のダメな兄という役割を演じることで弟のエリートとしての位が守られ、無事に結婚できるのであればそれで分だった。
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敬さん、どうかしたか?
いえ、何でもありませんよ。
叔父の問いかけに敬は再び柔らかく穏やかに首を振った。
披宴は順調にしていた。
司会者の滑らかな声が響き、グラスにシャンパンが注がれていく。
もなく乾杯の挨拶が始まろうとしている。
敬はメインテーブルで幸せそうに微笑む弟夫婦を見つめながら静かに息を吐いた。
このまま波をてず無事に式が終わってくれればいい。
自分がどれだけ見されようとも、弟のれ姿を見届けられればそれだけで満なのだから。
しかし、敬のそのささやかな願いは、酒が入り始めて気分を良くした義父の暴によって無惨にも打ち砕かれることになる。
静かにしていた披宴の空気がやがて取り返しのつかないほどの修羅へと変貌していく音を、敬はまだ気づいていなかった。
素らしいスピーチでした。それでは乾杯の音を取らせていただきます。郎・優馬君の輝かしい未来に乾杯。
巧みな学教授の発声と共に会全体が華やかな拍とグラスの打ち鳴らされる音に包まれた。
流ホテルのギャルソンたちが音もなくテーブルのを滑るように歩き回り、彩り鮮やかなフランス料理のフルコースを次々と運んでくる。
会の隅では弦楽奏の演奏が始まり、優雅な調べが々の歓談にを添えていた。