"十年目の地下街" 第2話
当としては、かなり派に見えるだった。
実はしばらく考えた。母に黙ってくことにろめたさはあった。けれど、10万円という言葉がかられなかった。
「分かりました。でも、本当に1で帰れますか」
「もちろんだ。配するな」
男は満そうに頷き、実を助席へ案内した。
実がに乗ると、男はすぐにエンジンをかけた。は井町のを抜け、芝方面へ向かった。
最初、実は窓のの景を眺めていた。らないをることに、しだけわくわくしていた。しかしが経つにつれ、町の様子が変わっていくことに気づいた。通りがなくなり、っている建物も見えなくなった。
実はになり、男の横顔を見た。
「おじさん、ここどこですか。すごくくまで来たみたいですけど」
その瞬、男の表が変わった。
さっきまでの親切そうな笑みは消え、たい目つきだけが残った。
「黙ってろ。もうすぐ着く」
その声を聞いた瞬、実の体はくなった。
何かがおかしい。
臓が激しく鳴り始めた。に帰りたい。お母さんのところへ戻りたい。そのいだけがのを駆け巡った。
はさらにり続けた。
京のるい並みはざかり、窓のはますます暗くなっていった。
その頃、では良子が計を見げていた。
午730分を過ぎていた。実は約束を守る子だった。
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たとえし遅れることがあっても、こんなまで黙って帰らないことはなかった。
良子はを閉め、所を回りした。友達のに寄っているのかもしれない。文具にいるのかもしれない。そう自分に言い聞かせながら、を探し歩いた。
しかし、実の姿はどこにもなかった。
午8になると、良子はできず、ファンタジーゲームセンターへ向かった。
主の田はカウンターに座っていた。
「うちの実、まだいますか」
良子が息を切らして尋ねると、田は首を横に振った。
「実君なら、6頃に帰りましたよ」
「6にてったのは確かですか」
「ええ。ほかの子たちもそのくらいに帰りましたから」
良子の胸がざわついた。
ゲームセンターからまでは歩いて10分もかからない。6にをたなら、もうとっくに帰っているはずだった。
良子は文具や駄菓子、公園まで探した。けれど、どこにも実はいなかった。
午9、良子はで夜勤をしていた夫の哲也に話をかけた。受話器を握るが震えていた。
「実が帰ってこないの。6にゲームセンターをたのに、まだ帰ってこないのよ」
話の向こうで、哲也の声が変わった。
「何だって。分かった。今すぐ帰る」
哲也は急いでをて、に戻った。20以んできた町だったが、その夜のは、いつもより暗く、恐ろしく見えた。
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夫婦は晩、所を探し回った。警察にも通報した。しかし、まだ24経っていないという理由で、本格な捜査にはなかなかいてもらえなかった。当は、子どもが遊びにて遅く帰ってくることも珍しくないと見られていた。
だが、良子の直は違っていた。
実は、絶対にこんなことをする子ではない。
何かが起きたのだ。
夜がけても、実は帰ってこなかった。
良子は玄関のにち、何度もの奥を見た。今にも実が「ただいま」と言って帰ってくる気がした。
そのの良子は、まだ信じていた。
1か2すれば、息子は必ず帰ってくる。
しかし、それは10続くい待ちの始まりにすぎなかった。
24が過ぎ、ようやく警察がきした。品川署の警部補は20の経験を持つベテランだった。子どもの失踪事件を扱うたび、親の顔を見るのがつらかった。
「ゲームセンターを6頃にたというのは確実なんですね」
が確認すると、良子は腫れた目で頷いた。晩泣き続けたせいで、声はかすれていた。
「はい。のがそう言っていました」
「実君は普段から、くへきたいとか、親戚のへきたいとか話していましたか」
「いいえ。あの子は所でしか遊びません。くへくのを怖がる子なんです」
は帳にき込みながら、険しい顔をした。
1985当、防犯カメラはほとんどなかった。頼りになるのは目撃証言だけだった。
警察はゲームセンター周辺を調べた。