"銀の指輪の応募者" 第9話
受話器の向こうから、洗練された秘の声が聞こえてきた。
『田ユト様。ご提いただいた設計図が、い評価で通過いたしました。つきましては、の午9より、会主催の特別次面接をいます。お子様連れでも構いませんので、までに会までお越しください』
ユトは、携帯を握るがまるで枯れ葉のように激しく震えた。
終わった、もう何の希望も残っていないとっていたチャンスが、再び奇跡のように巡ってきたのだ。真っ暗なトンネルの先に、筋の烈なが差し込んできたようだった。
ユトは話を切るやいなや、集治療のガラス窓に駆け寄り、咽び泣くように叫んだ。
「ミサキ、諦めなくていいんだ! チャンスが来た! 俺が何としてでも、おを必ず助けるから!」
ガラスの向こうの妻は、依然として微だにせず眠っていた。しかし、ユトの胸には、先ほどまでなかったい種が、激しく燃えがっていた。
翌朝、ユトは再び古いおんぶ紐にハルトをしっかりと背負い、建設の本社ビルのにっていた。昨と同じ巨な建物だったが、ユトの差しは昨とは全く違っていた。
晩、集治療の廊の子でもせずに夜をかしたため、目のには濃い隈ができていたが、その瞳だけは力く輝いていた。
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病院のトイレの鏡のでで顔を洗い、皺くちゃのシャツをでできる限り伸ばしたが、当然アイロンをかけたようにはならなかった。それでも、ユトは襟元を正し、カバンの紐を締め直した。これが、妻を救える最のチャンスだと分かっていたからだ。
昨、追いされるようにしててきたあのロビーを、再び通らなければならないことが怖くなかったと言えば嘘になる。しかし、集治療のガラスの向こうで辛うじて息をしている妻の姿をえば、恐怖など贅沢なものだった。ユトは歯をい縛り、正面玄関のガラスドアをく押した。
案内デスクでは、秘の職員がユトを待っていた。昨とは全く違う、極めて丁寧な態度でユトを迎えると、会専用エレベーターのまで直接エスコートしてくれた。昨、自分をゴミを見るような目で見ていたあのロビーを、今は秘の案内付きで歩いていくのは奇妙な気分だった。
エレベーターが33階で止まると、なの防音扉が音もなくにいた。
扉がいた瞬、都会の喧騒が完全に遮断された、巨で豪華な会専用の執務が姿を現した。ユトはわず息を呑んだ。から井まで続く面のガラス窓の向こうに、京の全景が望できた。
この空の真ん、広いデスクの奥に、ふみ子が彫刻のように静かに座っていた。
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昨ロビーで見かけたのと同じたい無表だったが、彼女の目のにく刻まれた隈が、このも昨夜はもできなかったことを物語っていた。
机のには、ユトが昨置いていった図面がすでに広げられており、あちこちにふみ子が直接メモをき込んだ付箋がびっしりと貼られていた。晩、この図面を眺めていたという証拠だった。ふみ子の両隣には役員2が同席しており、秘の伊藤が歩ろに控えていた。
ユトは豪華な部ので、自分の古いおんぶ紐と、角のすり切れた類カバンが、このなくみすぼらしく見えることを自覚していた。しかし、彼の差しだけは切揺らがなかった。く腰を折って挨拶をする。
「田ユトです。このような特別な会をいただき、本当にありがとうございます」
ふみ子はその挨拶を受ける瞬、胸ので再び激しく鼓するを確かにじていた。しかし、彼女は最経営者としての仮面を被り、を無理やり押し殺した。今はに流されるではない。この青の才能が、単なる偶然の致なのか、それとも本物の才性なのかを、静に見極めなければならない。
ふみ子はたい表のまま、顎で向かいの子を指し示した。ユトは背のハルトが起きないよう、背筋を伸ばしたまま子の端にそっと腰掛けた。
膝のに古い類カバンを置き、震える両を太腿ので固く握りしめる。