"母が家を消した日" 第7話
きなスーツケース1つとさなバッグ。それだけがの持ち物だった。駅へ向かうを歩きながら、振り返ることはしなかった。だけを見つめて歩き続けた。幹線のホームにった、の目にはしいがあった。それは、希望のだった。
1012、曜の夕方。成田空港の到着ロビーは帰国客で賑わっていた。健、美紀、りの3がスーツケースを引いて歩いている。2週のハワイ旅から戻ってきたところだった。
「楽しかったね、パパ!」とりが弾んだ声で言う。
「そうね。お母さんも緒だったら良かったのにね」と美紀が答えたが、その声に本はじられなかった。
「でも、お母さん丈夫かな? 2週も1で……」と健がし配そうに言う。
「丈夫ですよ。旅も話しましたし」と美紀が軽い調子で答えた。
3はリムジンバスとタクシーを乗り継ぎ、午7頃に世田のマンションのに到着した。の夕暮れ空がオレンジに染まっている。
「ただいま!」とりが建物を見げた。
健がエントランスのオートロックのにち、カードキーをかざした。しかし反応がない。おかしいな、ともう度試すと、ピピッという音と共に赤いランプが点滅した。エラーの図だった。
「壊れたのかな?」と美紀がそうに言う。
「管理さんに聞いてみよう」
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健は管理へ向かった。ドアをノックすると、60代の管理がてきた。
「あの、302号のですが、カードキーが反応しなくて……」
管理の顔が瞬で困惑した表になる。
「さん……ですか。名義変更が完全に完していますよ」
「え? 所者の様がマンションを売却されたんです。昨、鍵の交換と最終続きが完しています」
管理は淡々と説した。健の顔から血の気が引いていく。そんな、まさか。美紀も管理へ寄ってきた。どういうことですかと詰め寄る。
「正式な続きを踏んでおられますので。おをこちらでお預かりしています」
管理が封筒を差しした。宛名には健の名がかれている。健は震えるでそれを受け取った。
「お母さん、どこへったの!?」
美紀がスマートフォンでの番号に話をかけた。しかし、「この番号は現使われておりません」と自メッセージが流れた。繋がらない。美紀の声が震える。
健は封筒をけ、便箋を読み始めた。
『健へ。私はあなたたちの計画を全てっています。お盆の夜、あなたたちの会話を聞きました。私を施設に入れてマンションを売る計画を。美紀さんの部でメモも見つけました……』
健の目がきく見かれる。横から覗き込んだ美紀の顔が蒼になった。
『すべて写真に残しています。
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もうあなたたちに利用されることはありません。これからは私自のを切にきていきます。母より』
はそこで終わっていた。健のからが滑り落ちそうになる。見られていたんだ、全部。
美紀はそのにへたり込んだ。スーツケースが面に倒れる音がした。
「嘘……こんなの嘘よ……」
りが2の様子を見てそうに言う。
「ママ、どうしたの?」
健は何も答えられなかった。言葉が喉からてこない。マンションの入りで3はち尽くしていた。夜のがゆっくりと辺りを包み始めていく。通りを歩く々が議そうに3を見ていた。
「どうしよう……今夜泊まる所が……」と美紀が震える声で言った。
健はを見つめ続けている。母さんは本気だったんだ。美紀は面を見つめたままけない。涙が伝って落ちていった。私たちどうなるの? その声は誰にも届かなかった。の夜が3の周りを吹き抜けていく。マンションのかりがいくつもついているが、そこにはもう3の居所はなかった。健は空を見げた。
「お母さん……」
その言葉は夜空に消えていった。美紀のが面をかく。悔しさと絶望が体を支配していた。りが何が起きたのか理解できないまま泣き始めた。楽しかったハワイ旅のいがい昔のようにじられた。
10に入り、健の活は変した。む所がないため、その夜はくのビジネスホテルに泊まった。狭い部に3でを寄せう。