"最後の夜の写真" 第1話
くで波が寄せては返す音だけが、単調なリズムを刻んでいた。
しーんと静まり返った部の壁に掛けられた計の針は、とうの昔に止まっている。まるでお盆の期のあの瞬から、が流れることを拒絶したかのように、そこにはただ濃密な静寂と、答えのないだけが取り残されていた。
なぜ彼らは帰ってこなかったのか。あの夜、楽しげな笑い声が響いていたはずの空に、体何が起きたのか。物語は7のあの夜へと遡る。すべてのがまだ輝かしい未来へと繋がっていると、誰もが信じていた最の夜へ。
2013615、鎌倉の夜はまとわりつくような湿気を含んでいた。
初の温かいがから微かな塩のりを運んでくる。岸沿いにつさな旅館の庭先で、4の若者の笑い声が弾けていた。
「浩司、本当にアメリカっちゃうんだな」
健がし寂しそうに言いながら、持ちの先にをつけた。パチパチと頼りなげな音をてて、オレンジのがに散る。そのさなが、4の若い顔を柔らかく照らしした。
にいたのは、田浩司だった。仲たちよりしだけ背がく、焼けした顔に懐っこい笑顔を浮かべていた。1週にはアメリカの学へ留学するため、本をつ。この夜は、彼のためのささやかな送別会だった。
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「当たりだろ。ビッグになって帰ってくるから、おら待ってろよ」
浩司がそう言って笑うと、田子がすかさずを尖らせた。
「お産忘れたら許さないからね。あと、毎連絡すること!」
「はい、はい」
浩司が苦笑いしながらを振ると、子の隣では絵美がスマートフォンの画面を庭のにかざしながら、楽しそうに微笑んでいた。そして、そんな3の姿を、健がしれた所から穏やかな目で見守っている。代からずっと変わらない景だった。
この旅館は健の叔父が経営しており、彼らにとっては何者にも代えがたいいの詰まった所だった。やがて、最の1本だったのが消え、甘い煙の匂いだけが残った。名残り惜しいような、それでいて未来への期待に満ちた議な沈黙が、4のに流れる。その静けさを破ったのは子だった。
「ねえ、最に写真撮ろうよ。記にさ」
その提案に、全員が楽しそうに頷いた。刻は2330分。
旅館のい壁を背景に、4はギュッとを寄せった。央にった浩司が、健と絵美の肩を力く抱きしめる。その温かな触が、れてもずっと繋がれている証のようにじられた。子は満面の笑みでVサインを作る。
絵美が掲げたスマートフォンのカメラが、の夜のを瞬だけく照らしした。
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「よし、撮れた!」
絵美はすぐに画面を操作して、撮れたばかりの写真をLINEのグループに投稿した。添えられた言葉は、希望に満ちた無邪気な言だった。 『最の夜! 浩司頑張って!』
その「最の夜」という言葉が、やがてどれほどく残酷なを持つことになるのか、このの彼らにはる由もなかった。写真のの4は、ただ永に続くと信じていた友の真んで、最の笑顔を浮かべている。
宴は終わり、片付けを済ませた4が旅館の玄関をたのは、付が変わった616の午015分だった。健の叔父が「気をつけて帰れよ」と温かい声をかける。
浩司が父親から借りてきた、し季の入ったいトヨタ・カローラに4は乗り込んだ。
「ごちそうさまでした! またすぐ来ます!」
浩司が運転席の窓から顔をし、きくを振った。助席の健、部座席の子と絵美もそれに続く。ここから彼らがむ京都までは、が空いていれば40分ほどの距だ。すぐにまた会える、誰もがそうっていた。
エンジンがかかり、ヘッドライトが暗いをく照らす。ゆっくりときしたカローラはやがて角を曲がり、その赤いテールランプが夜のに吸い込まれるようにして見えなくなった。それが、4の元気な姿を見た最の記憶となった。
は目である京都に着くことはなかった。
そして、4が再び族の元へ帰ってくることも、永になかった。