"死んだふりの母" 第2話
おたちは、私が汗垂らして働き、き夫と共に必のいで貯めてきたささやかな財産と、私の命にかけられた保険だけが目当てだったのだ。 けない老婆の枕元で、その肉をい千切ることしかにない、ハイエナのような夫婦。
私は、体の奥底から激しく湧きがってくるりの炎を、呼吸のリズムすら変えずに必で抑え込んだ。 まだだ。まだくではない。この5、私はこののために絶えに耐えてきたのだ。 この屈辱、この憎悪のすべてをらす瞬は、もう目のまで迫っている。
弓は、黙り込んだ健太の様子を見て、ふと何かをいついたように、ニヤリと唇の端を歪めて卑しい笑みを浮かべた。その表は、肉親を呪う悪魔そのものに見えた。
「ねえ、あなた……いっそのこと、この命維持装置、止めちゃわない?」
その悪魔の囁きが病に響いた瞬、さすがの健太も驚愕したように顔をねげ、顔面から血の気が引いていくのが分かった。
「な、何を言っているんだ! そんなこと、できるわけないだろう!」
健太は声を震わせ、子からちがろうとして激しく揺した。しかし、弓はそんな夫の肩をたく見ろし、せせら笑う。
「どうして? 誰も見てやしないわよ。ちょっとコンセントを抜いて、あとは『械の故障でした』って言えばいいのよ。
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そうすれば、私たちはこの荷から瞬で解放される。誰もそんなこと、疑いやしないわ」
弓はそう吐き捨てると、ゆっくりと腰をげ、私が繋がれている命維持装置へと、歩、また歩と音を忍ばせてづいてきた。 彼女の細い指先には、紛れもない確な殺が宿っていた。 健太は、ただ青ざめた顔でを半きにしたまま、そのに釘付けになったようにち尽くすだけだった。
それでいい、弓。もっとづけ。おのその醜い本性を、私はこの瞼の裏の暗のにしっかりと焼き付けておく。 私の臓は、静かに、しかし復讐の瞬に向けて力く鼓を続けていた。 台はった。あとは、このに相応しいもうの主役が登するのを待つだけだ。
弓の赤く塗られた指先が、命維持装置の源コードの根元に触れようとした、まさにそのだった。 病のい製のドアが、静かに、しかし無を言わせぬ絶対な圧力を伴って、ゆっくりとかれた。
ドアをけて通ののにっていたのは、私のき夫の、番の弟――つまり、私にとって義理の弟に当たる正だった。 現役代は敏腕刑事としてその名を轟かせ、定退職した今も、そのの鋭さはしも衰えていない。 正はドアの枠にをかけたまま静かに腕を組み、氷のようにたい線で、命維持装置にをかけようとしていた弓の指先を真っ直ぐに射抜いていた。
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「ま、正おじさん……どうして、ここに……」
健太が、まるで蚊の鳴くような声で、喉を震わせて呟いた。 弓は、まるでが止まったかのように腰の姿勢のまま、完全に直している。 その赤くい指先は、源コードからわずか数センチのところで、虚空を掴んだまま微かに震えていた。
「どうしてだと? 姉さんの見いに来るのに、いちいち理由がいるのか、健太」
正の声はく、静かだった。しかし、その声の響きは病の隅にまで々しく広がり、健太と弓の臓を物理に鷲掴みにしたかのような威圧を持っていた。
「そ、そうですよね! もちろんですよ! いや、お久しぶりです、おじさん。母さんも、おじさんが来てくれてきっとんでいますよ。ねえ、母さん」
健太は、引きつった顔に必で笑いを作りすと、ベッドのの私に向かって自然にるい声をかけた。その芝居がかった過剰なるさこそが、彼の揺のさを如実に物語っていた。 方の弓は、はっとに返ると、命維持装置からサッとを引っ込め、何事もなかったかのようにすまし顔でい髪をかきげた。
「まあ、正さん、わざわざお忙しいのにありがとうございます。お義母様、相変わらずの状態でお労しくて……本当に私たちも、毎配しているんですよ」
その々しいセリフがに届いた瞬、私は瞼の裏の暗ので、5のあのを鮮にいしていた。