"壁の中の美大生" 第10話
の別荘から見つかった贋作。
佐藤美紀の帳。
偽名座の通帳。
渡辺の証言。
19901112の事記録。
壁の成分鑑定。
最の絵。
はそれでも笑った。
「全部、状況証拠だ」
伊藤は最に、1枚の写真を取りした。
それは、美紀の最の絵を赤線撮したものだった。
表面には夜の畔が描かれていた。
だが、層の絵の具のには、肉では見えない線が残っていた。
内の構図。
倒れた女性。
ブロンズ像を持つ男。
そして、その男の袖に入ったさな紋章。
グループの会員章だった。
田がい声で言った。
「美紀さんは、あなたを描いていました。自分が危険に晒されていることをり、絵のに残したんです」
の目が初めて揺れた。
伊藤は続けた。
「あなたは、美紀さんが最の絵を持って逃げようとしていたことをっていた。だから取り戻そうとした。だが彼女は拒んだ」
は唇を固く結んだ。
「会」
伊藤の声が静かに響いた。
「12、あなたが奪ったのは1の命だけではありません。母親の12、親友の12、恋の12、そして美紀さんが描くはずだった未来すべてです」
はしばらく黙っていた。
やがて、かすれた声で言った。
「……あの娘が悪い」
田の拳が机のでく握られた。
はうつむいたまま続けた。
「黙っていれば、も未来も与えてやった。
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なのに、正義だの真実だのと言いした。若いくせに、何も分かっていなかった」
伊藤は表を変えなかった。
「それがですね」
は顔をげた。
その瞬、自分が何をにしたのか気づいたようだった。
だが遅かった。
伊藤は録音を止めた。
「郎。佐藤美紀さん殺害の容疑で逮捕する」
錠がかけられる、は最までりの目をしていた。
反省ではなかった。
悔でもなかった。
自分の支配が崩れたことへのりだった。
田はその姿を見ながら、初めてこの事件の本当の恐ろしさを理解した。
美紀は、怪物に殺されたのではない。
と権力を持った、普通の顔をしたに殺されたのだ。
郎の逮捕は、梨にきな衝撃を与えた。
元は連、事件をきく報じた。
力実業による贋作取引。
美殺害。
カフェの壁に遺体を隠した12。
かつて佐藤美紀の失踪を「恋との喧嘩の末の」と片付けた々は、言葉を失った。
田賢治は、佐藤美紀の母親のでくをげた。
「僕は、美紀を信じてやれませんでした。あの夜、彼女を1にしてしまいました」
母親はしばらく田を見つめていた。
りもしみも、12分のみを持ってそこにあった。
けれど最に、彼女はさく首を振った。
「あなたが殺したわけではありません。でも、美紀はずっと苦しかったといます」
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田は声を殺して泣いた。
渡辺もまた、美紀の墓のにった。
彼女はを供え、い、をわせていた。
「ごめんね、美紀。私だけ逃げて、ごめんね」
が墓の々を揺らした。
の声は、誰に聞かせるためでもなかった。
12、胸の奥に閉じ込めてきた言葉だった。
やがて彼女は涙を拭き、静かに顔をげた。
「でも、もう隠れない。あなたのことを、ちゃんと話してきていく」
数か、裁判が始まった。
鈴勝は自らの罪を認めた。
郎は最まで部を否認したが、贋作取引の証拠、鈴の供述、渡辺の証言、美紀の帳、偽名座、そして最の絵が、彼の嘘を1つずつ崩していった。
判決の、傍聴席には佐藤美紀の母親が座っていた。
伊藤と田も方で静かに見守っていた。
裁判が判決を読みげる、母親は膝のでハンカチを握りしめていた。
すべてが終わったあと、彼女は法廷ので伊藤にをげた。
「娘を、暗い壁のから連れしてくださって、ありがとうございました」
伊藤はくをげ返した。
「遅くなってしまいました」
母親は涙を浮かべたまま、静かに言った。
「それでも、美紀は帰ってきました」
その言葉に、田は目を伏せた。
事件が解決しても、失われたは戻らない。
美紀が描くはずだった絵も、歩くはずだったも、母親と過ごすはずだった未来も、戻ってはこない。
それでも、真実だけは壁のから取り戻された。
の終わり。