"壁の中の美大生" 第3話
伊藤と田は、瞬だけ線を交わした。
翌、2は当のカフェのマスターだった鈴勝を訪ねた。
鈴は郊の古い県営宅にんでいた。脳卒で倒れた妻を介護しながら、静かに暮らしているという。
部のには薬の匂いが漂い、奥からかすかなうめき声が聞こえていた。
60代半ばの鈴は、腰をかがめて丁寧にをげた。
「刑事さんたち、わざわざお越しくださって」
伊藤は子に座り、まっすぐ切りした。
「佐藤美紀さんの件で、再びお話を伺います」
鈴の顔に、いしみが広がった。
「とうとう……そうなってしまいましたか。いい子だったのに。12、どこかで元気に暮らしているとばかりっていました」
「事件当の夜、覚えていることを話してください」
鈴はし目を伏せた。
「12と何も変わりません。美紀ちゃんはいつも通りを閉めて、1でをました。私は先にへ帰りました」
「その夜、に戻ったことはありませんか」
伊藤の目が鋭くなった。
鈴は首を横に振った。
「ありません。病気の妻の世話をして、そのまま寝ました」
証言はっていた。
だが、いすぎているようにも見えた。
その、捜査チームはカフェ周辺を回り、当をる々に聞き込みを続けた。
ようやく、かつてカフェの向かいでさなスーパーを営んでいた老にたどり着いた。
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老はしばらく記憶を辿ったあと、顎を撫でながら言った。
「遺体がたというなら言うが……あの夜、妙に騒がしかったような気がする」
田がを乗りした。
「どんな音でしたか」
「若い男女がわめき散らして喧嘩する声じゃった。そのは恋同士の喧嘩だろうとって、気にしなかった」
「は覚えていますか」
「を閉めようとしていた頃だから、夜の11はとっくに過ぎておったはずじゃ」
伊藤の表が変わった。
田は10頃に別れたと言った。
しかし老は、11過ぎに喧嘩の声を聞いたと言っている。
どちらかが嘘をついている。
あるいは、そこにはもう1、別の誰かがいた。
佐藤美紀の実は、古い造宅だった。
玄関をけたのは、70代の母親だった。娘の遺体が見つかったことを聞いて以来、何度も泣き続けたのだろう。目元は赤く腫れていた。
母親は伊藤と田のを握り、震える声で言った。
「娘を……かわいそうな美紀を、今になってでも見つけてくださって、本当にありがとうございます」
伊藤はくをげた。
「お母さん、美紀さんにをするような理由はありましたか」
母親はきっぱり首を横に振った。
「ありません。うちの美紀は、絶対にそんなことをする子ではありません。この母を度も困らせたことのない孝娘でした」
田は慎に尋ねた。
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「何か悩みや配事はありませんでしたか」
母親は涙を拭いながら、しばらく考え込んだ。
「それは分、ちゃんならっているはずです」
「ちゃん?」
「渡辺さんです。美紀とは何でも打ちけられる親友でした」
田は捜査記録をいた。
「渡辺さんは、美紀さんの失踪から1か、アメリカへ留学したと記録されています」
母親はさくうなずいた。
「そうです。急に留学すると言って、それからぷっつり連絡が途絶えてしまいました」
警察署に戻った伊藤は、すぐに渡辺の入国記録を調べさせた。
しかし、端末の画面を見ていた田が眉をひそめた。
「刑事さん、おかしいです」
「どうした」
「渡辺の国記録がどこにもありません。1990以、本をた記録がないんです」
伊藤はホワイトボードのにった。
田賢治。
鈴勝。
渡辺。
それぞれの名のに、赤い線が引かれていく。
「恋は10に別れたと言っている。だが、11過ぎに喧嘩の声を聞いた目撃者がいる。鈴の証言はいすぎている。そして、アメリカに留学したはずの親友は、本をていない」
田は息を呑んだ。
「何かが完全にずれていますね」
「ああ」
伊藤はく答えた。
「そして何より、佐藤美紀自に秘密がすぎる」
美紀は貧しい庭の美としてられていた。
だが田の証言では、失踪に価なやバッグを買い始めていた。
おの所。
消えた親友。
11過ぎの喧嘩。
そして、壁のの遺体。
伊藤は子にく座り、古い捜査記録をもう度いた。