"壁の中の美大生" 第2話
「当たりだ。自分ので壁のに入り、自分でを割るはいない」
田はすぐに警察署の資料へ向かった。
湿ったの匂いがこもる部には、古い未解決事件のファイルが代別に並んでいた。彼は1990代の失踪事件ファイルを1冊ずつめくった。
やがて、指があるファイルので止まった。
表にはこうかれていた。
「美・佐藤美紀失踪事件」
田はそのファイルを慎に取りした。
には、あどけなさの残る若い女性の写真が貼られていた。きな目をした、静かな表の女子だった。
名は佐藤美紀。
失踪当22歳。
田はページをめくった。所持品リストのに、細いの指輪をネックレスとして着用していたという記録があった。
臓がく鳴った。
田はファイルを抱え、急いで伊藤の元へ戻った。
「刑事さん、これを見てください」
伊藤は証拠品袋ののの指輪と、古いファイルにかれた記録を交互に見た。
記述は正確に致していた。
「佐藤美紀。19901111失踪……」
伊藤はくつぶやいた。
当の捜査記録には、恋だった田賢治の名が力な関係者として挙がっていた。しかし遺体は見つからず、決定な証拠もなかったため、事件は失踪として扱われたまま止まっていた。
1週、遺体の歯科記録と遺族のDNA鑑定結果がた。
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伊藤は結果用を受け取ると、田を呼んだ。
「田君、これで確実になった。壁から発見された遺体は、12に失踪した佐藤美紀で違いない」
田はファイルを握りしめた。
「では、正式に殺事件として捜査を再するんですね」
「ああ」
伊藤はホワイトボードの央に、きく付をいた。
19901111。
「12止まっていた計が、再びき始めたんだ」
田は古い捜査記録を机に広げた。
「佐藤美紀さんが最に目撃されたのは、このです。畔のカフェでアルバイトを終えたあと、恋の田賢治と会ったことになっています」
伊藤はホワイトボードを指で叩いた。
「記録によると、2は畔で激しく論していた。目撃証言もある」
「はい。それが最の目撃報です」
伊藤は田賢治の現の所がかれたメモをに取った。
「まずはこの男に会う。当24歳なら、今は36歳のはずだ」
田は背筋を伸ばした。
「すぐに向かいます」
伊藤は窓のを見た。
はがっていたが、空はまだかった。
「12、あの寒く暗い壁のにいたんだ。今からでも、必ず無をらしてやる」
その声は、捜査の静けさのでく響いた。
田賢治は、町内の閑静なマンションにんでいた。
36歳になった彼は、きちんとしたシャツを着た、ごく普通の会社員に見えた。玄関の奥からは、妻と学くらいの息子がそうに顔を覗かせていた。
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しかし、伊藤が警察帳を見せた瞬、田の顔はのように固まった。
「もしかして……美紀のことで来られたんですか」
声は震えていた。
伊藤は静かに告げた。
「佐藤美紀さんの遺体が発見されました」
田は膝から力が抜けたように、ソファへ崩れ落ちた。
両でを抱え、しばらく何も言えなかった。
「そんな……本当に……くなっていたんですね」
伊藤は帳を取りした。
「12のあの夜、最に会ったの話をもう度聞かせてください」
田はい息を吐き、苦しげにをいた。
「カフェの仕事が終わってから、畔で会いました。その、僕の方から別れを切りしたんです」
「理由は何ですか」
田が尋ねた。
田は線を落とした。
「美紀の様子が、最おかしかったんです。貧しいの子で、活も楽ではなかったはずなのに、急に価なやバッグを買い始めた。どこからそんなおが入るのか聞いても、絶対に答えてくれませんでした」
田のはさく震えていた。
「それで喧嘩になったんです。僕は腹がって、先に背を向けて帰りました。夜の10頃だったといます。それが最です。本当に、それ以来、美紀には会っていません」
伊藤は表を変えずに聞いた。
「そのはどこへ」
「友のにって、朝まで酒をみました」
「その友の連絡先は」
田は困ったように顔を歪めた。
「5にカナダへ移してしまって、今は連絡が取れません」