"スイカ畑の12年" 第1話
1989の、野県のあるで、スイカ農を営んでいた佐藤5が忽然と姿を消した。
帯は、スイカ栽培で計をてる農がい域だった。毎6を過ぎると、畑ごとにスイカが熟し、夜けから荷を積んだが畑に並んだ。農たちは炎ので収穫を続け、問との値段交渉に追われた。子どもたちは、割れたスイカのかけらを拾ってべながらり回り、全体がの匂いとの声に満ちていた。
しかし、その、1軒だけが妙に静かだった。
佐藤茂夫の農園だった。
の々が異変に気づき始めたのは、19897旬のことだった。収穫期だというのに、佐藤の畑にはの姿がなかった。荷を運ぶも来ず、畑のスイカは熟しすぎて、ひび割れ始めていた。
最初におかしいとじたのは、隣の畑を使っていた鈴清子だった。彼女は佐藤とは10以の付きいがあった。
「佐藤さんは1も畑を休むじゃありません。のでも、体の具が悪いでもてくるでした。収穫期に畑を空けるなんて、ありえないことです」
鈴清子はそう言って、の駐所に相談した。
佐藤は5族だった。の佐藤茂夫は46歳。妻のゆき子は42歳。男の健太は16歳、女のはるかは13歳、末っ子の勇気は8歳だった。この5が、19897旬のわずか数のに、同に姿を消したのである。
広告
78の午、駐所の警察官たちが初めて佐藤を訪れた。
に鍵はかかっていなかった。台所には炊かれたまま傷んだご飯が残っていた。縁側のには、子ども用の靴がきちんと揃えられていた。押し入れをけても、や着物はそのままだった。旅にた形跡も、夜逃げの準備をした痕跡もなかった。
さらに奇妙なことがあった。
佐藤では鶏を飼っていたが、鶏の扉がいたままになっていた。鶏たちは畑のを歩き回り、割れたスイカをつついていた。まるで、誰かが急いでをれ、鶏を閉める余裕もなかったかのようだった。
警察は当初、夜逃げの能性を考えた。当、農では借を抱え、族ごと姿を消す例がないわけではなかった。けれど、所の々は首を横に振った。
「佐藤さんのにきな借があったなんて聞いたことがない。今はスイカの来も良かった。むしろ収入が見込まれていたはずだ」
収穫の直に、なぜ全員が畑もも置いて消えたのか。
誰も答えをせなかった。
そしてその頃、ので1の名がささやかれ始めた。
本武志。
隣にむ40代の男で、佐藤茂夫とは古い親友だった。
本武志は、佐藤茂夫と20以からのりいだった。若い頃には緒に雇いの仕事をし、酒もみ、族同士の付きいもあった。
広告
の々から見れば、2は親友と呼べる関係だった。
しかし数から、その関係にひびが入っていたという噂があった。
原因はだった。
佐藤茂夫が本武志にを貸したが、本が返さなかったという話である。額については、によって話が違った。50万円だという者もいれば、100万円を超えていたという者もいた。1989当の農にとって、決してさな額ではなかった。
鈴清子は、警察にこう話した。
「ごろ、佐藤さんが言っていました。『武志のことでが痛い。返してくれと言うとりす』って」
警察官たちは本武志を訪ねた。
本は自宅にいた。突然訪ねてきた警察官を見ても、取り乱す様子はなかった。むしろ落ち着きすぎているほどだった。
「私も、あのたちがどこへったのかりません。最は忙しくて、連絡もしていませんでしたから」
声は穏やかだった。
だが、その態度がかえって気だった。
本武志は、の々にとって説しにくい物だった。悪いだと断言できるわけではない。けれど、どこか腹の底が見えない。誰に聞いても、似たような答えが返ってきた。
「悪いじゃないんだけど、何を考えているのか分からないところがある」
警察がの話を持ちすと、本の表がわずかに変わった。
「それは昔の話です。したことじゃありません。
周りが勝に誤解しているだけです」
声はく、目は落ち着かなかった。