"妻のポーチから見つかった結婚指輪" 第4話
「側だけ触って洗濯物を取っただけだよ、の見えない布ポーチだったし、どうかしたの?」
首を傾げ、無邪気な夫の雰囲気を演じる。弓の肩の力がふっと抜けるのが分かる。
「あ、ううん、何でもないの。繊細なレース着が入ってるから洗いしなきゃとって。気を遣ってくれてありがとう、誠さん」
弓は笑いを浮かべ、素く洗濯のからポーチを抜き取り胸にく抱え込む。そのには、絶対に誰にも奪われたくないい執着が宿っていた。
私は「そうか」とく返事をし、洗面台へ背を向ける。背から弓がさく息を吐く音が聞こえた。
あのポーチの奥には、らない男との婚約指輪、私が汗と苦労で貯めた 2150 万円の通帳が隠されている。彼女は秘密が守られたことに堵しているのだ。
そのの朝、弓はいつも以に嫌が良かった。リビングへくと、普段ほとんど作らない私好みのだし巻き卵が卓に並び、淹れたてのコーヒーのりが部に漂っていた。
「張で留守にしちゃったから今は特別なの。誠さん、いつものことを全部伝ってくれて本当に謝してるのよ」
弓は婚の頃のような甘い声で私に微笑みかける。22 し守ろうとっていた妻の笑顔、だが今の私には、その裏に隠れた汚い欲望が透けて見える。
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「ありがとう、弓も仕事お疲れ様」
胃から湧きがる嫌悪を必にみ込み、コーヒーにをつける。を啜っているようなまずいが広がる。
彼女は私の老資を盗み、親友と密会しながら、完璧な良妻を演じ続けて私をさせ、疑わせないための、恐ろしく甘い偽りだ。
午 8 、私はいつも通りスーツを着て会社へ向かう。満員に揺られながらのは健と弓のことで杯になる。
なぜ健だったのか?健は私より遥かに収入がく、独で自由で華やかな活を送っている。なぜ親友である私の妻にをした?弓はなぜ私を捨て健を選ぼうとする?
これは単なる浮気じゃない。「田弓」名義の通帳と婚約指輪が、の本気度を証している。は確実に私を社会に抹殺し、だけを奪って再婚するつもりだ。
昼休み、会社のベンチで缶ジュースをんでいると、スマホが鳴った。画面に表示された名は田健。昨夜妻のスマホ通で見たあの男だ。
瞬息を止め、く呼吸して通話ボタンを押す。
「おう、仕事か?」
話の向こうから聞こえるのは、学代から変わらない、自信に満ちたるい健の声。
「いや、昼休みだよ。どうした?珍しい話だな」
声が震えないよう細の注を払って返答する。
「別に、ちょっとおの声が聞きたくなってさ。
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最元気にやってるか?弓さんも仕事で忙しいんだろ」
健の言葉に背筋にたいものがる。昨夜妻に送ったメッセージ「あいつが仕事にったら話する」、健は朝弓と連絡を取り、「誠は何も気づいていない」という報告を受けた、のため私に話をかけ、私の様子を探りに来たのだ。
「ああ、弓は昨まで阪に張だったんだ。エリアマネージャーになってから本当に忙しそうだよ」
あえて張の話を振って反応を伺う。すると健はしげさな調子で話す。
「へえ、阪か。実は俺も昨まで仕事で阪にいたんだよ。もしかしたらどこかですれ違ってたかもな、ははは」
その乾いた笑い声を聞いた瞬、私はすべてを悟った。これはアリバイ作だ。万が阪でが緒にいるところを目撃されても、「たまたま仕事で同じ所にいただけ」と言い逃れるための予防線だ。
「そうか、奇遇だな。弓にもよろしく伝えておいてくれ。たまには奥さんを労わってやれよ、本当にいい奥さんなんだから。来の週末、久々にでみにこうぜ」
「ああ、そうだな、楽しみにしてるよ」
話を切った、押し寄せる激しいりで持っていた空き缶をく握り潰す。「本当にいい奥さんなんだから」と、親友の妻を寝取り、夫の財産を奪おうとしている男が、よくもこんな台を吐けたものだ。
は私を何もらないれな化師と見し、あざ笑っている。