"春雨に消えた妻" 第3話
所にむという女性は、その煙の匂いを覚えていた。
「何か燃える匂いがしました。でもないのに落ち葉を燃やしているのかといました。でもで考えると、そうではなかったのかもしれません」
の捜査記録では、その煙が女性用の類の部であった能性が指摘されることになる。
幸はその頃、再び健に話をかけていた。
「順子が、同級の誰かと個に連絡を取っていたことをりませんか」
健の声は、やはり落ち着いていた。
「さあ、私にはよく分かりません。もともと物静かなでしたからね」
そして逆に、幸を慰めるように言った。
「奥さんから、きっと連絡が来ますよ。あまり配しないでください」
その声に揺らぎはなかった。
1が過ぎた。
5が過ぎた。
そして10が過ぎても、順子は帰ってこなかった。
警察の捜査はうやむやのうちに終結し、公式類には「方」という4文字だけが残った。
幸は毎になると、妻が歩いてていったマンションの入りにった。のが吹き、いカーテンが揺れる季節になるたびに、あののろ姿が蘇った。
駄箱の隅には、順子がよく履いていたいヒールの黒い靴がいそのまま置かれていた。
処分することはできなかった。
いつか帰ってきた、必になるかもしれないとったからだ。
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義母の静は、順子が姿を消してから3にこの世をった。臨終の直まで、「順子や」と嫁の名を呼んでいたという。
幸は1で葬儀を取りった。
のから1、また1との気配が消えていく。その静けさので、幸だけが順子を待ち続けた。
同じ頃、健のは逆方向へんでいた。
1995、健は事業を拡した。建築資材の納品業はニュータウン発の景気に乗り、急速に成していった。2には横浜内にしい事務所を設した。
1998には再婚した。相は20代半の女性だった。
結婚式の招待状は、幸の元にも届いた。
幸はその封筒をにしたまま、しばらく言葉を失った。妻が姿を消してから6目のことだった。
健は折、幸に否を尋ねる話をかけてきた。
「先輩、最どうしていますか」
「ご飯はちゃんとべていますか」
く、親しげな言葉だった。
幸はその話を受けるたびに、奇妙な気分になったという。
なのに、なぜなのか説できない。親切な言葉のはずなのに、受話器を置いた、胸の奥にたいものが残る。
2000代に入っても、健の事業は順調だった。再婚した妻とのには子どももまれた。から見れば、彼はすべてをに入れた男だった。
しかし、くで見ていた々は、しずつ異変をじ始めていた。
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健は、1992当にんでいたから引っ越そうとしなかった。
妻がしいマンションへ移ろうと何度も提案しても、健はそのたびに断った。
「ここが落ち着くんだ。み慣れた所にいてこそ、事業もうまくいく」
理由はいつも同じだった。
再婚した妻には、その頑固さが理解できなかった。
さらに、の裏庭の片隅には古い祠があった。特に切に祀っている様子はなく、実際に信仰している形跡もなかった。
それなのに健は、その祠の周辺にだけは絶対にを触れさせなかった。
ある、妻が庭を理するついでに祠を撤しようとすると、健は突然声を荒げた。
「そのままにしておけ。そこには触るな」
普段は滅にらない男が初めて鳴った瞬だったと、妻はに語っている。
夜にも異変はあった。
健はく眠ることができなかった。寝ている途で突然体を起こし、窓のをじっと見つめることが何度もあった。
「どんなを見たの」
妻が尋ねても、健は答えなかった。
ただ、庭の方を見ていた。
酒の量も増えた。最初は夕の晩酌程度だったが、2005頃には、1でくむがくなった。
酒をんだ夜、健は庭にて、あの祠のにくっていることがあった。
何かをするわけではない。ただ、黙ってっている。
所の林という民は、その姿を何度か目撃していた。
「夜に1で庭にっているんですよ。最初はに当たっているのかといました。