"百円玉の逆転" 第4話
その目は、いつもの穏やかな常連客ではなく、完全に弁護士の目だった。
ゆきさんはさらにスマートフォンを差しした。
「実は、復帰した私のロッカーに、こんなメモが入っていたんです」
画面には、の社内便用が映っていた。
黒いペンで、乱暴にかれている。
「任者みたいになりたくなかったら、余計なことはするな」
脅迫だった。
ゆきさんのきが怪しまれたのだろう。
私は胸が苦しくなった。
奏やゆきさんのように、の儲けの仕組みに振り回されるを助けたい。そうってき始めた。けれど今、私がゆきさんを危険に巻き込んでいるのかもしれない。
「あなたは無理しなくていいのよ」
私が言うと、ゆきさんはカウンターの隅に置かれた奏の貯箱を見つめた。
い沈黙のあと、彼女は言った。
「もうしだけ、頑張ります。あの子のあの箱をぶちまけたのは、私だから」
私は引きしから、奏がいたを取りした。
そこには、丸い字でこうかれていた。
「また遊びに来てね。ベアリバーで待ってるよ」
ゆきさんはそのを何度も読み返した。
そして、さく、でもはっきりとうなずいた。
「のみたいに、黙って消えるのは嫌なんです。自分で決めて、自分のでていきたい」
ゆきさんが帰ったあと、ベアリバーには私と佐藤さんだけが残った。
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佐藤さんは厳しい表になっていた。
「文子さん。ゆきさんのでは言いづらかったのですが、あえて厳しいことを言います。今回のマッチポンプの部分自体は、違法性がいとは言い切れません。録音と証言だけではい」
私は黙って聞いていた。
「これが世を騒がせるニュースになって、融庁をかすくらいにならないと、あのは変えられませんよ」
私は何もけていなかった、カウンターの引きしにをかけた。
には、いくつかの類が並んでいた。
「なら、きなニュースにするために、夫から引き継いだ法座を使いましょう」
類を見た佐藤さんの目がきくいた。
「文子さん、これを使うつもりですか」
私は静かに答えた。
「ええ。きなニュースにしないとかないのでしょう?」
数、たいが吹く。
私は夫の葬儀以来しまい込んでいたイヤリングをつけ、を再訪した。
窓で名乗り、静かに告げた。
「課さんと支さんに、お取引の件でお話がございます」
しばらくして、がてきた。私の顔を見た瞬、ほんの瞬だけ眉をひそめたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「先のお客様ですね。投資信託のお申し込みでしょうか」
「ええ。そのようなものです」
私はそう答えた。
応接に通されると、支も同席した。
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2とも、この先何が起きるのからない顔をしていた。
窓の奥で、ゆきさんと目がった。
私は応接のソファに腰をろした。は慣れた調子で投資信託の話に移ろうとしていた。
私はお茶を含み、ゆっくりカップを置いた。
「先、孫を連れて伺った際のことで、当にはい信を持っております」
空気が変わった。
と支が同に私を見る。
支の指がネクタイに伸びた。
「それは失礼いたしました。窓の者の際については、すでに厳に指導いたしましたので、どうかご容赦ください」
際。
あれを際と呼ぶのか。
私は静かに首を振った。
「誤解ではありませんよ。員さんから直接聞きました」
の目が瞬だけ鋭くなった。
「それはどなたのことでしょうか。の員の声では、何の証拠にもなりませんよ」
唇の端をゆがませながら、はい声で言い放った。
その、応接の扉がゆっくりいた。
制姿のゆきさんがっていた。
ドア越しに聞こえたの声が、彼女の背を押したのだろう。
が振り向いた。勤務の部が応接に入ってきた。それだけなら、彼はすぐに叱りつけたはずだった。
だががかなかった。
ゆきさんの目が、いつもと違っていたからだ。
彼女はスマートフォンをにしていた。
指先はこわばっていたが、その目はまっすぐを見ていた。
ゆきさんが画面をタップすると、応接にの声が響いた。