"霧の峠に消えた後継者" 第7話
それが帳のページをびっしりと埋めていた。
沢田と佐子は、懐灯のので、帳を1ページずつ読みめた。
そこには、総郎のありのままのが綴られていた。
継者という言葉のさ。族の期待に応えなければならない息苦しさ。自分のがまれたからすべて決められているというやりきれなさ。
華やかな財閥の表側からは決して見えない、1の青の痛々しい本だった。
やがて、消える数の付が記された節にたどり着いた。
そこにはこうかれていた。
「すべてを捨てて、誰にもられない所で、もう度をやり直したい」
沢田はく呟いた。
「自分ので……」
総郎は誘拐されたのではなかった。
事故に遭ったのでもなかった。
誰かに殺されたのでもなかった。
あのの峠で、彼は自らのでたい荷物をろし、すべてを捨てて姿を消したのだ。
佐子は声を殺して泣いていた。
兄がきているかもしれないび。
なぜ自分にだけは言も告げてくれなかったのかというしみ。
その2つが胸ので激しく混ざりっていた。
「お兄ちゃんは、1でこんなに苦しんでいたんですね」
佐子は帳を胸に抱きしめた。
だが、沢田の指は最のページで止まった。
そこには、の文章からしれて、たった1だけき添えられていた。
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「涼介には話した。あいつだけは分かってくれた」
その1を読んだ瞬、沢田の全にたいものがった。
涼介。
あの従兄。
総郎が消えれば、当主の座に最もづくにいた男。
けれど事件当夜には完璧なアリバイがあり、疑いをらした男。
沢田はかすれた声で呟いた。
「涼介は、っていたんだ」
総郎が自分ので消えようとしていたことを。
そして15く、誰にも語らなかったのだ。
沢田は腕計を見た。
効の成まで、本当にあとわずかだった。
「今すぐ戻りましょう」
沢田は帳を慎に布にくるんだ。
「最の真実は、涼介本のから聞かなければならない」
佐子は涙を拭き、く頷いた。
2は朽ちかけた別荘をにした。
背で玄関の扉がい音をてて閉まる。
15、で帰りを待ち続けていた帳は、ようやくその役目を果たそうとしていた。
夜けがづいていた。
沢田と佐子を乗せたが京へ戻ったのは、空がうっすらとみ始めるけ方のことだった。
効の成まで、残されたはもう両の指で数えられるほどしかない。
2が向かった先は、座のを見ろす層ビルのだった。
族の当主となった涼介が、朝から仕事に向かうのをそこで過ごしているという。沢田は警察のを使い、半ば引に面会を取りつけた。
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涼介は、15よりもはるかに貫禄を増していた。
髪が目つようになり、派な背広にを包んだその姿は、まさに族を束ねる当主のものだった。けれど、その目の奥には相変わらず、をじっと見定めるような油断のないがあった。
「これは刑事さん。お久しぶりですね」
涼介は落ち着いた声で言った。
「それに佐子さんまで。こんな朝く、体何のご用です」
沢田は無言で、布にくるんだ帳をテーブルのに置いた。
そしてゆっくりと布をく。
涼介の線が、その古びた帳に注がれた。
瞬だった。
本当に瞬だけ、その落ち着き払った表に、さざ波のような揺らぎがった。
沢田は見逃さなかった。
「軽井沢の別荘のから見つかりました」
沢田は静かに言った。
「総郎さんの帳です。最のページに、こうかれていました」
沢田は涼介を見据えた。
「涼介には話した。あいつだけは分かってくれた、と」
部のが静まり返った。
窓のでは、けゆく座の町がしずつ朝のに染まり始めていた。
涼介はしばらく何も言わなかった。テーブルのの帳をじっと見つめたまま、ち尽くしていた。
やがて、その肩からゆっくり力が抜けた。
い沈黙の、涼介はようやくいをいた。
「総郎は、あの夜、私に打ちけたんです」
その声は、15に沢田が聞いた静な男の声とは違っていた。
い、胸の奥に何かを押し込めてきたの、疲れきったい声だった。