"霧の峠に消えた後継者" 第6話
「軽井沢の、あの別荘です」
無のままく放置されているはずの別荘。
消えた鍵入れと、自らので消えたのかもしれないというたな見て。
すべての糸が、なぜかあの別荘へつながっているように沢田にはえた。
効まで残り1。
佐子と沢田は、最の望みをかけて夜のを軽井沢へ急ぐことになった。
その夜、沢田と佐子は軽井沢へ向かった。
付が変われば、たとえ何が見つかったとしても、もう罪を問うことはできなくなる。残されたはわずかだった。
2は言葉なに夜のをった。
京をる頃にはすっかりが暮れ、速の灯りが流れるようにろへ過ぎていった。やがてはあいへ入り、町のかりは消え、辺りはいに包まれた。
佐子は助席で、膝のに兄の写真を1枚置いていた。
品のいい笑みのに、どこかくを見つめる寂しげなまなざし。15としも変わらない兄の顔だった。
「お兄ちゃん……」
佐子は写真に向かって、ので呼びかけた。
軽井沢に着いたのは、夜も更けた頃だった。
2は10ではなく、15のあのの峠を越え、族が代々使ってきた別荘へ向かった。
別荘は林の奥にひっそりとっていた。い誰もまないまま放置された建物は、すっかり朽ちかけていた。
庭は伸び放題のに覆われ、かつて入れのき届いていたであろうも、今はに沈んでいる。
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戸は閉ざされ、軒には古い蜘蛛の巣が夜に揺れていた。
沢田は懐灯をに、をくぐった。
佐子もに続く。を踏み分ける音だけが、静かな林のに響いた。
相鍵で玄関の鍵をけると、古い錠はしばらく抵抗した、かちりと音をてて回った。
扉を押しけると、く閉ざされていたのから、黴と埃の匂いが流れしてきた。
「元に気をつけてください」
沢田が先に入り、懐灯で廊を照らした。
具にはい布がかけられ、そのにもい歳の埃が積もっていた。柱計は、ある刻を指したまま針を止めている。まるでこののだけ、が止まってしまったようだった。
2は部を1つずつ調べていった。
総郎がもしこの別荘にち寄ったのなら。
もし自らので姿を消したのなら。
何か痕跡が残っているのではないか。
そんなかすかな望みを胸に、2は布をめくり、引きしをけ、押し入れの奥まで懐灯のを当てた。
だが、なかなかこれといったものは見つからない。
だけが過ぎていく。
沢田は折腕計に目を落とした。効の成までもうほとんどがない。
そのだった。
「沢田さん」
奥のを調べていた佐子が、に声をげた。
「ここ、がしおかしいんです」
沢田が駆け寄ると、佐子はの片隅の畳を指していた。
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よく見ると、その枚だけがわずかに浮いているように見える。
沢田はしゃがみ込み、畳の縁に指をかけた。ぐっと力を込めると、畳はったよりも簡単に持ちがった。
そのから現れたのは、に作られたさな収納だった。
「ここに何か……」
沢田は懐灯で暗い穴のを照らした。
奥の方に、角いものが押し込まれている。
沢田はを伸ばし、埃まみれのそれを慎に引っ張りした。
古いボストンバッグだった。
革は乾き、ひび割れている。表面には15分の埃がく積もっていた。だが、それは確かに、誰かが図してこのに隠したものだった。
沢田と佐子は顔を見わせた。
2の胸が激しく鳴った。
沢田はくなった留め具を慎にした。きしむような音をてて、鞄のがく。
には、まず畳まれた類が入っていた。
男物のごく普通の着替えだった。財閥の継者が着るような仕ての良い背広ではない。どこにでもあるな普段着である。
そのには、わずかな現が封筒にまとめて入っていた。
そして鞄の底に、1冊の帳がひっそりと置かれていた。
佐子が震えるで、その帳を取りげた。
表をいた瞬、佐子の目から涙がこぼれ落ちた。
「お兄ちゃんの字です……」
そこに記されていたのは、違いなく総郎の跡だった。
佐子が子どもの頃から何度も見てきた、兄の優しい字。