"霧の峠に消えた後継者" 第4話
事故を疑わせる遺体もない。
残されたがかりは、の峠に止められた1台のと、部座席に置かれた鞄と鍵だけだった。
が経つにつれ、世の関も潮が引くようにれていった。
やがて事件は、継続捜査という名のもとに、静かに棚のへ押しげられていった。
沢田は最まで、総郎の写真を自分の帳に挟んでいた。
品のいい笑みのに、どこかくを見つめる寂しげなまなざし。
その目を見るたび、沢田は自分がまだ何1つ答えをせていないことをいらされた。
1995の失踪事件から、15い歳が流れていた。
世のはすっかり変わり、座の町並みもしずつ姿を変えていた。古くからあった商はしいビルに建て替わり、表通りには見慣れない板が並ぶようになった。
総郎の族では、結局、従兄の涼介が当主の座に就いていた。
総郎が戻らないまま、族にはしいが必だった。事件当、涼介にがあると疑われたこともあったが、隙のないアリバイによって疑いはすでにれていた。
歳とともに、々はあの事件を忘れていった。
ただ1を除いては。
総郎には、佐子という妹がいた。事件当はまだ若く、兄を慕い、兄の優しさを誰よりもよくる女性だった。
15く経っても、佐子は兄のことを1たりとも忘れたことがなかった。
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世が事件を忘れ、族がしい当主のもとで歩み始めても、佐子のでは、あのののがしも褪せることなく残り続けていた。
兄はどこへ消えてしまったのか。
きているのか。
それとも。
考え始めると、夜も眠れなくなることがあった。
「お兄ちゃんは、何も言わずにいなくなるようなじゃない」
佐子はずっとそう信じていた。
兄は、子どもの頃から妹のことを誰より切にしてくれた。継者というたい荷物を1で背負いながらも、佐子のではいつも穏やかに笑っていた。
そんな兄が、たった1の妹に何も告げず、突然姿を消すなど、どうしても信じられなかった。
効が目に迫ったあるの、佐子は押し入れの奥にしまい込んでいた古い段ボール箱をけた。
には、事件当の聞の切り抜き、自分でき留めた覚えき、警察からもらった資料の写しなどがぎっしり詰まっていた。
佐子は畳のにそれらを広げ、古びたを1枚ずつ丁寧にめくっていった。
窓のでは、夕方のがゆっくり傾き始めていた。
何か見落としているものはないか。
兄の方につながるわずかな糸はないか。
そう願いながら読み返していた、佐子のがふと止まった。
兄のから見つかった所持品の覧。
そこに、あるがあった。
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別荘の鍵。
佐子はその文字を何度も読み返した。
部座席に置かれていたという軽井沢の別荘の鍵。15く、何度も目にしてきたはずの記述だった。けれど、そのなぜか、胸のでさな違が音をてた。
「待って……お兄ちゃんの鍵は……」
佐子は記憶をたぐり寄せた。
総郎はいつも、たくさんの鍵を1つにまとめた古い革の鍵入れを肌さず持ち歩いていた。の鍵、会社の鍵、の鍵、そして別荘の鍵も、その鍵入れに緒についていたはずだった。
ところが、から見つかったのは、その鍵入れではない。
札のついた別荘の鍵が、1本だけ置かれていた。
佐子は当の写真の写しを引っ張りし、目を凝らした。
違いなかった。
それは兄がいつも持ち歩いていた鍵入れではなく、別荘に予備として置かれていたもう1本の鍵だった。
「じゃあ、お兄ちゃんがいつも持っていた本物の鍵入れは……」
佐子は資料を片っ端から調べ直した。
だが、どこにもその記載はなかった。
兄が肌さず持っていたはずの本物の鍵入れ。それはのからも、峠の周辺からも、ついに見つかっていなかったのである。
15く、誰1としてそこに気づかなかった。
あまりにも当たりのように「別荘の鍵があった」とされていたために、誰もその鍵が本物の鍵入れではなかったことを考えなかったのだ。
佐子の臓が激しく鳴った。
本物の鍵入れがないということは、兄はそれを持ってどこかへったのではないか。