"飲んではいけないお茶" 第5話
部のは、ゆかりが用している級ブランドのの甘くむせ返るような匂いで満たされていた。分い遮カーテンが引かれ、真昼のようなではないのに空気が淀んでいる。
綺麗にえられたキングサイズのベッド。壁面のウォークインクローゼット。すべてが価な調度品で統されているが、温かみのないショールームのようだった。
匠が指さしたのは、その巨なクローゼットだった。
佐子は息を殺してに入る。ブランド物のやバッグが几帳面に並べられていた。これらすべてが、健が汗流して稼いだで買われたものなのだとうと、腹の底が煮えくり返った。
「おばあちゃん、あの」
匠が棚のを指さした。
佐子はドレッサーの子を音をてないように引きずってきた。子のに乗り、つま先ちになると、ようやく棚にが届く。季節れのセーターのをそっと横へずらすと、その奥にひんやりとした属の触があった。
「あった」
慎に、しかし素く引きした。
それは匠が言っていた通り、A4サイズほどのの属製の箱だった。ずしりとく、鍵がかかっている。
「鍵は?」
佐子がつぶやくと、匠がさく言った。
「ママ、いつもドレッサーの1番の引きしに入れてる。の瓶のだよ」
なんと用周到で、なんと愚かなのだろう。
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佐子は匠の記憶力に謝しながら、ドレッサーの引きしをけた。並んだ瓶の1つを持ちげると、そのにさなの鍵が隠されていた。
2は箱と鍵を持って、リビングへ戻った。
ローテーブルのに箱を置く。匠が固唾をのんで見守る、佐子は震えるで鍵を鍵穴に差し込み、ゆっくりと回した。
かちり。
さな音が、部の空気を震わせた。
蓋がいた。
1番にあったのは、数枚の類の束だった。
診断。
患者氏名、柏匠。
発元は坂本メンタルクリニック。診断名は、度自閉症スペクトラム障害および発達遅滞。医師の名は坂本涼介。匠が言っていた、ゆかりの友という医師の名と致していた。
最初の診断の付は、匠が3歳になったばかりの頃。
それは、ゆかりが「療育に集したい」と言いし、佐子を半く孫からざけた、まさにその期だった。
次にてきたのは、遺言だった。
佐子は顧問弁護士の斎藤幸介と、すでに正式な遺言を作成していた。財産の部を匠の将来のために信託へ預け、残りを健に相続させる内容だったはずだ。
しかし、目のの遺言は違っていた。
そこには、佐子の全財産、鎌倉のから預貯、価証券に至るまで、すべてを無条件で息子の健に相続させるとかれていた。
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末尾の署名は、佐子の跡に酷似していたが、らかに偽造されたものだった。
箱のには、それだけではなかった。
見らぬ男と親密そうに寄り添うゆかりの写真が数枚あった。級ホテルのラウンジ、リゾートのプールサイド。男の顔には見覚えがあった。
坂本涼介。
診断に署名していた医師だった。
さらに、箱の底からさな茶い遮瓶がてきた。ラベルは剥がされ、には無透の液体が半分ほど入っている。
そばには、ゆかりの跡でかれたメモが折りたたまれていた。
「ジギタリス。料に5ml。48で痕跡なく全を偽装。致量に注」
ジギタリス。
佐子はその名を聞いたことがあった。臓の薬だ。だが量を違えれば、毒になる。
2の胸の痛み。
急性筋梗塞という診断。
あれは、これのせいだったのだ。
佐子はハンカチで瓶とメモを包み、ポケットの奥へしまった。そして偽の診断、偽の遺言、倫の写真を、スマートフォンで1枚ずつ撮した。
撮を終えると、すべてを元通り箱にしまい、寝のクローゼットへ戻した。
証拠はに入った。
だが、まだりない。
ゆかりと坂本の共謀を決定づけるものが必だった。
「匠ちゃん、もう1つだけ教えてくれる?」
リビングに戻ると、佐子は疲れ切った顔の匠に向き直った。
「あのは、パソコンか何か、よく使っているものはあるかしら」
「パソコンはあまり使わない。