"飲んではいけないお茶" 第4話
全ては計画の部だった。
佐子を孫から引きし、偽りの診断を信じ込ませ、自分を障害を持つ息子のために献する劇の母親に仕てげるための。
「おばあちゃん、丈夫?」
匠の配そうな声で、佐子はに返った。
見ると、孫がげな顔で自分を覗き込んでいる。その瞳には、もう虚ろなはなく、祖母を気遣う確かな理性が宿っていた。
今は過に囚われているではない。
目のには、命をかけて自分に真実を告げてくれたさな命がある。
佐子は、震える両に力を込めてちがった。そしてに散らばった湯呑みの破片を、1枚ずつ丁寧に拾い始めた。
「危ないから、あっちにっていなさい」
その声は、自分でも驚くほど落ち着いていた。
許さない。
佐子はので、何度もその言葉を繰り返した。
夫の遺産を狙い、自分を殺そうとしたこと。
それだけでも許されない。
だが、それ以に許せないのは、罪のない孫の8という尊いを奪い、そのを獄の底へ突き落としたことだ。
母親でありながら、が子を具としてしか見ていなかった。
佐子は片付けを終えると、匠のに膝をつき、そのさな両肩をしっかりと掴んだ。
「匠ちゃん、よく聞いて。あなたは何も悪くない。悪いのは全部、あのよ」
彼女はもう、ゆかりを「ゆかりさん」
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とは呼ばなかった。
「あの」と呼ぶその声には、氷のような軽蔑がこもっていた。
「そして、よくおばあちゃんに話してくれたわね。あなたは本当にい子よ。あなたの勇気が、おばあちゃんの命を救ってくれた。ありがとう」
匠は唇を噛みしめ、こくりとうなずいた。
「これからは、おばあちゃんが戦う番。あなたを、このを、国にいるおじいちゃんの名誉を、必ず守り抜いてみせる」
佐子は匠をく抱きしめた。
穏やかで、誰に対しても物腰の柔らかかった柏佐子は、もうどこにもいなかった。
そこにいたのは、する者を守るためなら悪魔にさえなる覚悟を決めた、1の戦士だった。
まずは証拠だった。
ゆかりが黒だという、かぬ証拠を掴まなければならない。そしてその証拠は、きっとあの女の部にある。
夜が更ける頃、佐子と匠は台所のテーブルで向かいって座っていた。計の秒針がを刻む音だけが、やけにきく響いている。
「匠ちゃん、これからおばあちゃんが言うことをよく聞いてくれる?」
佐子が尋ねると、匠は緊張した面持ちでうなずいた。
「お母さんの部のことで聞きたいの。あのが誰にも触らせない、事にしているものって何か当たりはある? いつも鍵をかけている引きしとか、箱とか」
ゆかりは極端なほど潔癖で、プライベートな空にが入ることを嫌った。
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特に夫婦の寝は聖域のように扱われ、佐子でさえ、ここ数はを踏み入れたことがなかった。
匠は眉にしわを寄せ、しばらく考え込んだ。
そして、はっとしたように顔をげた。
「ある。クローゼットの。1番の棚の奥」
「1番の棚?」
「うん。ママのがいっぱいかかってるきなクローゼット。その1番に、いつも置いてある箱があるんだ。鉄でできたの箱。父さんは背がいから届かないけど、ママはいつも背伸びしてし入れしてる」
それだ。
佐子の直が告げていた。
健は165cmほどしかないが、ゆかりは170cmい。夫にさえ見られたくないものを、そこに隠しているに違いない。
「その箱、今、取りにけるかしら」
佐子の言葉に、匠の顔が恐怖で引きつった。
「でも、ママの部に勝に入ったら……もしばれたら……」
「丈夫よ」
佐子は匠のたいを、自分ので包み込んだ。
「あのたちが帰ってくるのはの夕方。はあるわ。それに、これからはおばあちゃんがずっとそばにいる。もう、あなたを1にはしないから」
匠はを押し殺すように、もう度うなずいた。
2は音をてないよう、抜き差しで2階へ向かった。階段がきしむたび、匠の肩がびくりと震える。佐子はその背を優しく撫で、丈夫、と目で図した。
夫婦の寝のドアノブにをかけると、ひやりとした属の触が伝わってきた。
佐子は呼吸を1つして、静かにドアをけた。