"志摩の海に沈んだ母" 第5話
でも私は、2000万円ではりないと言ったんです。借は5000万円でしたから」
森は黙って聞いていた。
「母はりました。2000万円もなのに、それでもりないのかと。私も腹がって、じゃあに殺されろと言うのかと鳴りました」
正斗は両で顔を覆った。
「母がちがって、私を叱りました。目を覚ましなさい。自分のき方が悪かったからこうなったんだと」
「それで」
「私は、とっさに母を突きばしてしまいました」
正斗の声はさくなった。
「母はろによろめいて、タンスの角にをぶつけました。どすんという音がして、そのまま倒れたんです」
森は息を詰めた。
「お母さんの様子を確かめましたか」
「はい。息をしていませんでした。脈もありませんでした。から血がていました」
「その、どうしましたか」
正斗はい、答えられなかった。
やがて震える声で言った。
「の血を拭きました。雑巾で何度も拭きました。母の指輪を抜いて、かまどで焼きました。見つかるのが怖かったんです」
「骸は」
「夜けに、母のをしました。沖へて、をくくりつけて……に沈めました」
取調の空気が凍りついた。
1994715の夜け、正斗は母をに沈めた。その、へ戻り、女の着物を庭にかけ、母がへたように見せかけた。
そして、騒ぎが起こると何もらないふりをした。
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遺言は読んでいた。
母が自分を助けようとしていたこともっていた。
それでも彼は真実を隠し、印鑑証を正に取得し、財産を処理した。
兄たちには部のを分け、疑われないようにした。
港区のビルだけは、自分のものとして握り続けた。
すべての謎が、ようやくつながった。
20101115、島正斗は母親をなせた罪、骸を隠した罪、文偽造、詐欺などの疑いで送検された。
裁判は20113に始まった。
法廷で検察官は、正斗の罪を1つずつらかにした。
1994714の夜、正斗は銭問題で母と論になった。りに任せて母を突きばし、母はタンスの角にを打って命を落とした。正斗はその、骸をに沈め、事故に見せかけた。さらに母の名義を使って財産を正に取得し、兄たちには部を分けて疑いをそらした。
弁護は、正斗が偶発に罪を犯したと主張した。
「殺はなく、突きばしたことが幸な結果につながったものです。被告は当、い経済圧迫に苦しんでいました」
しかし裁判所の判断は厳しかった。
たとえ最初の為が偶発だったとしても、そののはらかに故だった。骸を隠し、証拠を消し、16にわたり真実を隠し続けた。さらに、母の名義を勝に使い、財産を当に得た。
何より、自分を産み育てた母をに至らせておきながら、そのを踏みにじった点はいと判断された。
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2011720、判決が言い渡された。
「被告、島正斗を懲役25に処する」
正斗はそので崩れ落ちた。
その、控訴したが、判決は覆らなかった。級審でも同じ判断がされた。2020の点で、正斗は役だった。所予定は2036。彼が社会に戻る頃には70歳を超えている。
男の健と次男の信夫は、起訴となった。2は弟の罪をらなかったことがらかになったからだった。
その、2は母の財産を取り戻すため、民事訴訟を起こした。
2013、裁判所は正斗が正に取得した財産をすべて無効とした。港区のビルをはじめとする財産は、遺言に従って再分配されることになった。
梅野の骸は、最まで見つからなかった。
それでも、2の息子は浜の共同墓に母の墓を建てた。墓には、こう刻まれた。
「をした島梅野」
毎715になると、健と信夫は墓を訪れる。
線をて、の方へ目を向ける。
「母さん、私たちを許してくれますか」
答える声はない。
だけが、静かに墓を通り抜けていく。
志摩のは、今もく青い。
島梅野が最に沈められたは、相変わらずたく、静かだった。
けれど、真実までは沈めることができなかった。
16かかっても、隠された罪は必ず浮かびがる。
母が残した遺言には、末の息子へのがあふれていた。
「正斗、私はおをしています。
あの子が番苦しく暮らしているから、もっと面倒を見てやりたい」
そのは、欲にまれた息子ので裏切られた。
方者の名義のビル。
偽造された印鑑証。
に残された血痕。
溶けたの指輪。
そして、タンスの奥に隠された1通の遺言。
それらが、16の夜を静かに語り始めた。
最もいの欲。
していた息子の裏切り。
これが、1994の志摩のから始まった劇の結末だった。
― 完 ―